概要
Pedestrian wind comfort (PWC: 歩行者風の快適性)解析では、Surface roughness (表面粗さ)やPorous objects (多孔質媒体)で、ジオメトリのAdvanced modeling設定を追加することが可能です。これにより、風の快適性シミュレーションにおける局所的な影響を正確にとらえ、より正確な解析を行うことができます。
Porous objects
Porous objects (多孔質媒体)は、流体を通す固体粒子で満たされた媒体です。多孔質媒体内の流路は、規則的または不規則的な配置をしています。
多孔質媒体は以下のように分類できます:
- Consolidated medium (連結媒体): 内部に気孔を有する個体。流体は気孔を通過します。
- Unconsolidated medium (非連結媒体): 固体粒子が集結した媒体。流体は粒子の周りを流れます。
多孔質体は、樹木、生け垣、網戸、その他の風を緩和する対策などの透過性障害物のモデルに使用されます。空気が多孔質体を流れるとき、流れの方向に沿った圧力勾配が発生します。多孔質体の単純化を使用することで、CADとメッシュの複雑さが軽減され、計算時間が節約されます。
PWC解析タイプでは、SimScaleは以下の2つのモデルを使用して多孔質オブジェクトをモデル化できます:
1. Darcy-Forchheimer モデル
Dary-Forchheimerモデルは形状の圧力損失特性が既知の場合に使用されます。このモデルは、局所速度に対する圧力損失の関係式を使用します。使用される2つの係数は、実験データへの曲線近似によって決定することができます。
空隙率による圧力損失は、経験的なDarcy-Forchheimerの式によってモデル化されます。
\[\frac{\overline{\Delta p}}{\Delta x}=- \frac{\mu}{K}\cdot\overline{u}-\rho\cdot\frac{F_{\epsilon}}{\sqrt{K}}\cdot|\overline{u}|\cdot\overline{u}\tag{1}\]
- \(\Delta p/\Delta x\): 圧力勾配
- \(\mu\): 粘度
- \(\rho\): 流体の密度
- \(\overline{u}\): 局所速度ベクトル
- \(F_{\epsilon}\): 摩擦形式係数
- \(K\): 透水係数
式の右辺の第1項と第2項は、それぞれDarcy項とForchheimer項です。Darcy項は、局所速度ベクトルと線形関係を持つ摩擦抗力を表します。Forchheimer項は慣性抗力、または局所速度ベクトルに対して二次の関係を持つ形状抗力を表します。
SimScaleで多孔質媒体を定義するために、\(K\)と\(F_{\epsilon}\)を定義します。最低3つのデータポイントを使用して、曲線近似を実行し て、\(K\)と\(F_{\epsilon}\)を予測します。以下に例を示します:
実験データ:
| u \([m/s]\) | dP/dx \([Pa/m]\) |
| 1 | 9.88 |
| 4 | 123.33 |
| 16 | 1852.84 |
空気の曲線式:
\[\frac{\mathrm{d}P}{\mathrm{d}x}=\frac{0.0000181}{K}\cdot u+1\cdot\frac{F_{\epsilon}}{K^{0.5}}\cdot u^2 \tag{2}\]
曲線近似法を用いて、\(K\)と\(F_{\epsilon}\)は以下のように計算されます:
- \(K\) = 0.00007135065
- \(F_{\epsilon}\) = 0.01890935
\(K\)と\(F_{\epsilon}\)が計算されると、Darcy-Forchheimerの多孔質オブジェクトの適用ができます。多孔質媒体割り当ての選択は、面、ボリューム、またはGeometry primitives (ジオメトリプリミティブ)の形で行うことができます。
Permeability typeをIsotropicにした場合、すべての方向に対して同じ抵抗になりますが、Directionalは各方向に個別に抵抗を定義することができます。
2.Tree (樹木)モデル
樹木モデルは、植生(単木、潅木、生垣、林冠など)を多孔質媒体としてモデル化するために使用されます。EUの都市で最も一般的な5種類の樹木について、あらかじめ定義された多孔性を適用することができます。またはCustom treeで自由にパラメータを設定することも可能です。
Custom treeを作成するには、以下の入力が必要です:
- Leaf area index (LAI: 葉面積指数)
- Average tree height (平均樹高)
- Drag coefficient (抗力係数)
Leaf area index (葉面積指数)は無次元数で、植物の林冠を比較するのために用いられます。簡易的な定義は、単一表面積あたりの葉の投影面積です。
設定済みの樹木モデルの場合、ソルバーがLeaf area index (葉面積指数)とDrag coefficient (抗力係数)を自動的に適用するため、Average tree height (樹木の平均高さ)の割り当てのみが必要です。SimScaleでは以下のモデルが利用可能です。
- Plane tree (プラタナス)
- Oak (ナラ)
- Sycamore (セイヨウカジカエデ)
- Silver birch (シラカバ)
- Chess nut (ブナ)
次の表は、設定済みの樹木とそれぞれのLeaf area index (葉面積指数)、Drag coefficient (抗力係数)を示しています:
| Type of tree | Drag coefficient | Leaf area index |
| Plane tree | 0.2 | 5.28 |
| Oak | 0.2 | 5.1657 |
| Sycamore | 0.2 | 2.9675 |
| Silver birch | 0.2 | 3.2379 |
| Chessnut | 0.2 | 5.1972 |
上記の情報は、500カ所の70年以上にわたるデータをまとめたものです。
Tree (樹木)モデルでは、修正Darcy-Forchheimerの式を使用しています。透水係数\(K\)を高く設定することで、Darcy項を無視し、次のように簡略化しています:
\[\frac{\Delta\overline{p}}{\Delta x}=-\rho\cdot \frac{F_{\epsilon}}{\sqrt{K}}\cdot|\overline{u}|\cdot\overline{u}\tag{3}\]
次に、Drag Coefficient (抗力係数)\(C_d\)とLeaf Area Density (葉面積密度)\(LAD\)に関して定義するように式を修正しています:
\[\frac{\Delta \overline{p}}{\Delta x}=-\rho\cdot LAD \cdot C_d\cdot |\overline{u}|\cdot \overline{u}\tag{4}\]
Leaf Area Density (葉面積密度)\(LAD\)は、Leaf area index (葉面積指数)\(LAI\)とAverage tree height (平均樹高)\(h\)を用いて算出しています:
\[LAD=\frac{LAI}{h}\tag{5}\]
SimScaleでのトレスのモデリングについては、以下のページをご覧ください: