概要
流体を通過させる空隙や細孔を持つ、あるいは固体粒子で満たされた媒体や材料を多孔質体と呼びます。流体解析においては、英語をそのままポーラスメディアと呼ぶことも多々あります。
ポーラスメディアの形態として、以下の二つが考えられます。
- Unconsolidated Medium (非連結媒体):
大量の固体粒子がベッド内部に詰まっている媒体。流体は粒子の周りを流れます。 - Consolidated Medium (連結媒体):
固体が連結しており内部に孔を持つ媒体。流体は気孔を通過します。
また、ポーラスメディアは双方向性であり、等方性(3次元)であろうと1次元であろうと、流れは反対方向にも同様に通過できます。
下図のようなポーラスメディアを直接モデル化するのではなく単純化することで、CADモデルとメッシュの複雑さを軽減し、計算時間を節約することができます。
Porous media(ポーラスメディア)機能では、計算領域内のボリュームに多孔質特性を定義できます。この多孔質特性を定義することで、特定のトピックにおいてはシミュレーション精度の向上が期待できます。
Porous media(ポーラスメディア)は、シミュレーションツリーの Advanced Concepts から作成できます。SimScaleでは、シミュレーション領域内のポーラスメディアを以下の5種類の方法でモデル化できます。
- Darcy-Forchheimer mediumモデル
- Fixed coefficient medium (係数固定媒質)モデル
- Power law medium (べき乗媒質)モデル
- Pressure Loss Curve (圧力損失曲線)モデル
- Perforated Plate (穴あき板)モデル
それぞれについて、説明します。
Darcy-Forchheimer Medium
Darcy-Forchheimer mediumモデルは、圧力流束方程式に慣性項を追加することで、 非線形効果を考慮しています。
Darcy-Forchheimer mediumモデルでは運動量方程式のソース項を次のように導きます:
\[S=-(\mu d+\frac{\rho |U|}{2}f)U\]
ここで、
- \(S\)は圧力勾配\([Pa/m]\)
- \(\mu\)は動的粘度 \([kg/ms]\)
- \(d\)はDarcy係数 \([1/m^2]\)
- \(\rho\)は流体の密度 \([kg/m^3]\)
- \(U\)は流速 \([m/s]\)
- \(f\)はForchheimer係数 \([1/m]\)
なお、Darcy係数は透過率\(\kappa\)の逆数です。
\[d = \frac{1}{\kappa}\]
設定項目
Darcy係数とForchheimer係数、ポーラスメディアによる抵抗を設定する座標系を設定します。各係数は、方向成分を定義することにより、異方性特性を表現できます。
設定項目は以下の通りです:
- \(d\) [\(1/m^2\)]: Darcy係数
- x, y, z方向についてそれぞれ設定します。
- \(f\) [\(1/m\)]: Forchheimer係数
- x, y, z方向についてそれぞれ設定します。
- なお、\(f\)係数をゼロに設定すると、モデルはDarcy方程式と同義になります。
- Orientation: 使用する座標系
- Cartesian: CADモデルのX, Y, Zの直交座標系を利用します。
- Custom: ローカル座標系を定義する2つの単位ベクトル (Unit vector x, Unit vector y) を指定します。なお、第3のベクトルは暗黙のうちに定義されます。
- ここでの単位ベクトル\(\vec{e_1}, \vec{e_2}, \vec{e_3}\)は(x, y, z)のような右手座標系です。
- Assigned volumes: ポーラスメディアを割り当てる部位をCADパーツで選択します。
- Geometry primitives: ポーラスメディアを割り当てる領域をジオメトリプリミティブ機能で作成・設定します。
各方向に対する係数\(d\)と\(f\)の値を、すべての方向に対して同じ値にした場合、等方性媒質として、各方向に対して異なる値にした場合、異方性媒質として定義できます。
Darcy-Forchheimer mediumの適用例については、こちらのページをご覧ください。
Fixed Coefficient Medium
Fixed coefficient medium (係数固定媒質)モデルでは、ユーザーが\(\alpha\)と\(\beta\)を入力する必要があります。このモデルのソース項は以下の通りです:
\[S=-\rho_{ref}(\alpha + \beta|U|)U\]
- \(S\)は圧力勾配\([Pa/m]\)と同様の意味になります
- \(\rho_{ref}\)は流体の密度 \([kg/m^3]\)です。この値は、Compressible (圧縮性)およびConvective heat transfer (対流熱伝導)シミュレーションにのみ使用されます。それ以外の解析タイプでは、Materialで設定された\(\rho\)が使用されます。
- \(U\)は流速 \([m/s]\)
設定項目
Darcy-Forchheimerモデルと同様に、\(\alpha\)係数と\(\beta\)係数、ポーラスメディアによる抵抗を設定する座標系を設定します。各係数は、方向成分を定義することにより、異方性特性を表現できます。
設定項目は以下の通りです:
- \((\alpha)\) Alpha [\(1/s\)]: \(\alpha\)係数
- x, y, z方向についてそれぞれ設定します。
- \((\beta)\) Beta [\(1/m\)]: \(\beta\)係数
- x, y, z方向についてそれぞれ設定します。
- Orientation: 使用する座標系
- Cartesian: CADモデルのX, Y, Zの直交座標系を利用します。
- Custom: ローカル座標系を定義する2つの単位ベクトル (Unit vector x, Unit vector y) を指定します。なお、第3のベクトルは暗黙のうちに定義されます。
- ここでの単位ベクトル\(\vec{e_1}, \vec{e_2}, \vec{e_3}\)は(x, y, z)のような右手座標系です。
- Assigned volumes: ポーラスメディアを割り当てる部位をCADパーツで選択します。
- Geometry primitives: ポーラスメディアを割り当てる領域をジオメトリプリミティブ機能で作成・設定します。
各方向に対する係数\(\alpha\)と\(\beta\)の値を、すべての方向に対して同じ値にした場合、等方性媒質として、各方向に対して異なる値にした場合、異方性媒質として定義できます。
| 重要 |
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Fixed coefficientは、Presuure loss curve (圧力損失曲線)モデルと並んで、Compressible (圧縮性)、Incompressible (非圧縮性)、Convective heat transfer (対流熱伝達)でのみ使用できます。 |
Power Law Medium
Power law medium (べき乗媒質)モデルでは、運動量方程式のソース項は次式で与えられます:
\[S=-\rho C_0|U|^{(C_1)}\]
ここで:
- \(S\)は圧力勾配\([Pa/m]\)と同様の意味になります
- \(C_0\)は線形係数
- \(C_1\)は指数係数
- \(\rho\)は流体の密度 \([kg/m^3]\)
- \(U\)は流速 \([m/s]\)
Power Law媒質は常に等方性であることに注意してください。
設定項目
- Linear coefficient: 線形係数
- 上式の\(C_0\)です。
- Exponent coefficient: 指数係数
- 上式の\(C_1\)です。
- Assigned volumes: ポーラスメディアを割り当てる部位をCADパーツで選択します。
- Geometry primitives: ポーラスメディアを割り当てる領域をジオメトリプリミティブ機能で作成・設定します。
Power law mediumの適用例については、こちらのページをご覧ください。
Pressure Loss Curve
Pressure Loss Curve (圧力損失曲線)モデルは、Darcy-Forchheimerモデルを簡略化したものです。
設定項目
設定項目は以下の通りです:
- Test data
- Pressure loss curve \([m]\): 圧力損失曲線
- 最低3つのデータを表形式で入力してください。
注: より良い結果を得るために、常に最初の行にデータ点(0, 0)を定義して表を開始してください。(この最初のデータ点を含めて最低3つのデータとしてください。) - Volumetric flow rate (体積流量)\([m^3/s]\)に対するPressure loss (圧力損失)\([Pa]\)
図2: データの入力例。少なくとも3つのデータを提供する必要があります。
- 最低3つのデータを表形式で入力してください。
- Length in flow direction \([m^2]\): 流れ方向の長さ
- ポーラスメディアの流れ方向の長さを設定します。
- Cross-sectional area \([m^2]\): 断面積
- 流れ方向に対する断面積を設定します。
- Pressure loss curve \([m]\): 圧力損失曲線
- Directional dependency (方向依存性)- Permeability type (透水性)
- Isotropic (等方性)
- すべての方向に対してポーラス特性が適用されます。
- Directional (異方性)
- Directionでポーラス特性を割り当てる方向をx, y, zで設定します。
- Isotropic (等方性)
- Assigned volumes: ポーラスメディアを割り当てる部位をCADパーツで選択します。
- Geometry primitives: ポーラスメディアを割り当てる領域をジオメトリプリミティブ機能で作成・設定します。
| 重要 |
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これらの入力は、曲線の生成に使用したポーラスメディアの長さとその断面積(流れに対する法線)を定義します。これらの入力は、ポーラスメディア内の流れに依存するもので、必ずしもポーラスメディアのモデリングに使用されているCAD部品の寸法を意味するものではありません。 |
入力に基づき、多項式曲線近似が行われ、Darcy係数が自動的に計算されます。したがって、Pressure Loss Curveによる定式化は、Darcy-Forchheimerモデルを使用するのにより便利な方法です。
| 重要 |
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曲線近似法は、(最初の(0, 0)点を含む)合計3点以上のデータ点が提供されている場合に機能します。しかし、ユーザーが体積流量\([m^3/s]\)に対するジオメトリの圧力損失\(\Delta P\ [Pa]\)のデータを3点未満で入力しているケースが多いです。 このような場合、以下の方法で近似して対応することができます。この近似は乱流に対して特に優れており、十分な一致が得られます:
1. Darcy-Forchheimerモデルに従い、Darcy係数がゼロであると仮定します。つまり、慣性項(Forchheimer)のみを考慮します。 2. \(f\)を計算します。Darcy-Forchheimer式を変形すると次のようになります。 3. 異なる速度(例えば、最初のデータポイントの速度の2倍)を選択し、対応する\(\Delta P\)を計算することによって、追加のデータポイントを外挿する。 \[\Delta P=\frac{f \rho U^2}{2}\] 4. ステップ3で設定した流速に対応する流量を計算する。 5. 下の図は、結果として得られた3点を示しています。[1]は初期データ点。[2]は計算して外挿された点、[3]は最初の(0, 0)のデータ点です。
6. 最初の点が(0, 0)になるように留意して、表にデータ点を入力する。 7. 表の値は、(0, 0)から最大点まで一貫して増加する必要があります。また、表の値は同じ値を繰り返し入力してはいけません。 |
Perforated Plate
Perforated Plate (穴あき板)モデルは、幾何学的パラメータに基づいて圧力損失を推定します。
設定項目
設定項目は以下の通りです:
- Plate data
- Free area ratio (自由面積比): 穴あき板の開口面積(穴の面積)と板の総面積の比。
- Hole shape (穴の形状): デフォルトはGeneralです。Circular (円形)も選択可能です。Circular (円形)の場合はAverage hole diameter (平均穴径)も指定します。
- Direction (流れ方向): この入力で、ユーザーは媒体内の主要な流れ方向を指定することができます。この方向はグローバル座標に基づいています。
- Assigned volumes: ポーラスメディアを割り当てる部位をCADパーツで選択します。
- Geometry primitives: ポーラスメディアを割り当てる領域をジオメトリプリミティブ機能で作成・設定します。
Perforated Plate (穴あき板)モデルは、文献[1]に示された式に基づいています。
| 重要 |
| すべてのポーラスメディアモデルにおいて、ポーラスメディアの周囲の領域が十分に細かくメッシュ分割される必要があります。ポーラスメディアの厚み方向に少なくとも5つのメッシュセルが作成されていることを確認してください。 |
参考文献
- [1] VDI Heat Atlas. Second Edition. Springer-Verlag Berlin Heidelberg 2010.