太陽から放射される電磁放射は日射と呼ばれます。熱流体解析においては、日射は(境界条件で設定した熱源の)追加の熱源として作用します。熱的快適性の検討などでは、太陽放射率を無視すると結果の精度に影響を与える可能性があります。SimScaleでは、 Solar loadモジュールによって日射の影響を考慮したシミュレーションが可能です。
Conjugate Heat Transfer v2.0 (共役熱伝達v2.0)解析タイプで利用可能です。図1に示す、グローバル設定に Solar load という項目があるので、トグルをオンにすると利用できます。
日射量の設定は、グローバル設定で Solar load を有効にすると表示されるシミュレーションツリーのSolar calculator (太陽計算機能)から行います。設定には主にSun direction (太陽の方向)とSolar load (日射量)の2つの設定が必要です。以下に詳細を説明します。
| 重要 |
| Solar loadモデルの現在のバージョンでは、光線が不透明な境界に当たると、反射は考慮されません。 |
Sun direction (太陽の方向)
太陽の方向では、ユーザーはシミュレーションのために太陽の位置を指定して日射の向きを設定できます。太陽の位置によって太陽光線の方向が変わるので重要です。
Work Benchでは、Sun direction設定に基づいて現在のSun directionを示す黄色い矢印が表示されます。この設定には、Time and placeとCustomの2つの設定方法があります。
Time and Place (時間と場所)
この構成は、与えられた日時と場所について、ジオメトリに対する太陽の位置を指定します。空は正のz方向、北の方向は正のy方向にあると仮定されることに注意してください。アップロードしたモデルで北の方向が異なる場合は、北の方向を角度で調整することもできます。
図2は、Time and placeの設定ステップを示しています。
- モデルで北の方向が+y方向でない場合は、北の角度を調整することができます。
- 表示されるマップでシミュレーションしているモデルがある場所を入力します。
- 日時を指定します。
このようにSimScaleは、日付、時刻、場所を指定すると、モデルに対する太陽の相対位置を計算します。
Custom (カスタム)
2つ目のオプションは、Sun direction vectorのカスタム定義です。ワークベンチの右下にある方位キューブに基づいて、ユーザーは太陽の光の方向を定義することができます:
Solar Load (日射量)
太陽の方向を設定した後、考慮するDirect solar load (直達日射量)とDiffuse solar load (散乱日射量)を定義します。異なる境界条件がSolar loadにどのように影響するかについては、このドキュメントの次のセクション (Boundary Conditions (境界条件)との相互作用)を参照してください。
モデル外側の不透明な境界面が直達日射または散乱日射のいずれかにさらされる場合、光線はその境界面へ熱源として作用します。つまり、Direct solar load (直達日射量)およびDiffuse solar load (散乱日射量)のいずれも、計算領域外側の境界面によって吸収される場合は外部の熱源とみなされます(以降、外部日射とします)。
さらに、Direct solar load (直達日射量) はモデル内側の境界面 に作用する場合もあります。 これは、窓からさしこんだ光線が床面に当たった場合のように、光線が透明または半透明の境界からモデル内部に入り、別の透明または半透明の境界から外部に出る前に不透明な境界に当たった際に生じます。この場合、日射は内部的の熱源とみなされます(以降、内部日射とします)。
例えば、図4の左側の部屋のように、窓を表す3つの透明/半透明の境界を持つ会議室を考えます。この場合、右図で黄色い矢印で示す壁や人といった部屋内の面では内部日射を表し、青い矢印は外部日射を表します。
Solar loadについて、サポートされている2つの設定方法を以下に示します。
Custom (カスタム)
Custom設定では、ユーザーはDirect solar load (直達日射量)とDiffuse solar load (散乱日射量)を明示的に設定できます:
このオプションは、日射を特定の値で設定する場合に用います。
Fair Weather Conditions
Fair Weather Conditionsは、Direct solar load (直達日射量)およびDiffuse solar load (散乱日射量)を定義する代替方法です。基礎となる方程式については、2001 ASHRAE Fundamentals Handbook[1]の第29章の表14を参照してください。
この方法は、空が+z方向、+y方向が北を指していると仮定します。このため、Custom sun directionを使用する場合、Sun direction vectorは-z方向でなければなりません。(そうでなければ、太陽は地平線の下にあることになります。)
Fair Weather Conditions を用いる場合、ユーザーは以下のようなパラメーターを設定する必要があります:
- Sky cloud cover fraction (雲量率)は、空に占める雲の割合を示します。
- Ground reflectivity (地面の反射率)は、計算領域周辺の地面の色と質感に依存します。
- 残りの項目は、地球外の太陽放射照度に関するものです。2001 ASHRAE Fundamentals Handbook[1]の第30章 表7を以下に示します:
| 見かけ日射量 | 大気消滅率 | 拡散放射係数 | |
| 1月 | 1230 | 0.142 | 0.058 |
| 2月 | 1215 | 0.144 | 0.060 |
| 3月 | 1186 | 0.156 | 0.071 |
| 4月 | 1136 | 0.180 | 0.097 |
| 5月 | 1104 | 0.196 | 0.121 |
| 6月 | 1088 | 0.205 | 0.134 |
| 7月 | 1085 | 0.207 | 0.136 |
| 8月 | 1107 | 0.201 | 0.122 |
| 9月 | 1151 | 0.177 | 0.092 |
| 10月 | 1192 | 0.160 | 0.073 |
| 11月 | 1221 | 0.149 | 0.063 |
| 12月 | 1233 | 0.142 | 0.057 |
Boundary Conditions (境界条件)における設定
Solar loadと領域の温度場の結び付けは、境界条件によって行われます。境界に光線が当たると、入射する日射の一部または全部を吸収または透過します。すべての境界条件はそのように日射を伝達しますが、Temperature type の定義によっては、境界条件は内部と外部で吸収される日射に対して異なる反応を示します。
さらに、Solar relative behavior (日射に対する挙動)という項目で、Transparent (透明)、Semi-transparent (半透明)、Opaque (不透明)のいずれかを選択します。一般的に、流入口と流出口はTransparent (透明)で、光を通さない境界はOpaque (不透明)です。ガラスのような材料は、いくらかの光を通すのでSemi-transparent (半透明)です。
以下では、 Wall 境界条件の Temperature type のそれぞれの種類における日射に対する挙動を説明します。
Fixed Temperature (固定温度)
境界の温度は一定なので、Solar loadは影響しません。
Adiabatic (断熱)
内部で吸収されたSolar loadに対しては、断熱境界条件は固定勾配となり、壁が隣接する流体セルに熱を伝達します。
外部日射が発生した場合、境界が断熱的に構成されているため、外部からの熱流束が計算領域に影響することはありません。したがって、外部からの光線は完全に遮断されます。
External Wall Heat Flux (外壁熱流束)
External wall heat flux(外壁熱流束)を選択する場合、図8にあるように、ユーザーは熱流束タイプを定義する必要があります。これには3つのオプションがあります:
- Fixed heat flux (固定熱流束):固定熱流束を定義するため、外部日射を考慮しません。しかし、内部日射はFixed heat flux (固定熱流束)に加算されます。その結果、より多くの熱が隣接する流域セルに作用します。
- Fixed power (固定出力):挙動はFixed heat flux (固定熱流束)と同じです。外部日射はこの境界条件に影響しませんが、内部日射は境界の表面積に基づく熱流束として追加されます。
- Derived heat flux (派生熱流束):この設定を使用する場合、外部日射・内部日射の両方が影響します。この境界を通る熱流束は、熱伝達係数、温度差、Solar loadによって定義されます。
| 注 |
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Derived heat fluxを使用する際、境界が外部環境にさらされていない場合(例えば、建物の内壁)、Outer surface emissivityをゼロにする必要があります。
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Post-processing (ポスト処理)
Solar loadをシミュレーションする場合、ポストプロセッサーでInternal solar loads (内部日射)とExternal solar loads (外部日射)を表示することが可能です。例えば、図4のSolar loadの設定を使用すると、次のような結果が得られます:
図9:External solar loads (外部日射)について、天井上の外部領域が作る影がExternal solar loads (外部日射)に及ぼす影響に注目してください。
また、Internal solar loads(内部日射)について、窓(Semi-transparent)と出入り口(Transparent)を通過する光線のみが考慮されます。
図10: 窓から入射する光線が当たる内部の不透明な部分には、追加の熱源として作用します。
また、PMVやPPDなどの熱的快適性パラメータを評価することも可能です。
参考文献