概要
Joule Heating (ジュール熱)は、導電体に電流を流すと熱エネルギーが放出される物理的効果を表します。導電体の電気抵抗率が高いほど、ジュール熱に変換されるエネルギーは多くなります。
ジュール熱の影響は、例えば電気ヒーターにおける意図的な発熱と、バスバー(制御盤に取り付ける母線)における望まない熱損失があります。後者の場合、熱管理および排熱を扱う際にジュール加熱効果を考慮する必要があります。
SimScaleでは、機能を有効にした場合、導電性材料の電気特性と電気境界条件を定義できます。シミュレーションでは、電気回路の熱損失を熱開放の熱損失として使用します。Electric Potential (電位)、Current Density (電流密度)、Joule Heat Generation (ジュール熱発生)が追加のSolution field (結果の分析)として計算されます。
Joule Heating (ジュール熱)を有効にする必要があるのは、主に以下のような場合です:
- 電気部品の熱損失は不明であるため、電力源としてモデル化することができない時。
- 電気部品の熱損失は、電気ヒーターなどの最適化において、とりわけ重要な時。
- 電力損失が導体内で一様に分布しない時(例: 断面積の変化に伴って)。
- 主な解析目的が電圧降下や電流密度の最適化のためである時。
以下の解析タイプにてご利用いただけます。
ジュール熱のシミュレーション・セットアップ
グローバル設定
解析にジュール熱を含めるには、グローバル設定パネルのJoule heatingトグルをオンにします。
Material (材料物性)
ジュール熱を計算するにあたっては、物体は導電体である必要があります。グローバル設定でジュール熱が有効になっている場合、 Materials の材料物性の設定において、Electric conductivity type (電気伝導率タイプ)という項目が表示されるようになり、以下から選択します。
- Dielectric (誘電体)
- 導電性よりも誘電性が優位な物質。直流電流に対しては絶縁体としてふるまいます。
- Isotropic conductor (等方性導体)
- すべての座標方向で電流に対する抵抗率が同じ等方性な特性を持つ導電体です。
- Orthotropic conductor (異方性導体)
- 座標方向に対して抵抗率が異なる異方性の特性を持つ導電体です。
Conductor (導電体)については、(ρ) Electric resistivity (電気抵抗率)を設定する必要があります。抵抗率とは、導電性物質がその中を流れる電流にどれだけ抵抗するかを示す尺度です。電気伝導率の逆数であり、より一般的に使用されています。単位は\(Ohm\times m\)で表されます。つまり、電流が流れる距離が長いほど全抵抗値は高く、電流が流れる断面積が大きいほど全抵抗値は低くなります。
| 注 |
|
SimScaleが提供するライブラリから材料をインポートするとき、その材料の典型的な電気的特性が提供されますが、それをさらに調整することも可能です。 流体は常に誘電体材料とみなされるため、電気的問題の解決には寄与しません。 |
Boundary Conditions (境界条件)
電流は固体材料内でのみ計算されているため、Wall (壁)境界条件より電気的な条件を追加します。
- (I) Current (電流)
- Current inflow (電流の流入) / Current outflow (電流の流出)
- 電流値 [A] (アンペア)で定義できます。
- Electric potential (電位)
- 電位を[V] (ボルト)で定義することができます。
- None
- 壁に既知の電気的条件がない場合は、境界を通過する電流を0と定義するデフォルト(None)のままにしておくことができます。
- Current inflow (電流の流入) / Current outflow (電流の流出)
電気境界条件は、電気回路の流れを定義し、次のいずれかを選択することができます。
- 少なくとも1つの電位境界条件を基準電位として、電流の流入と流出を定義する。
- 境界線上の電位のみを定義し、その電位差に基づいて電流を定義する。
| 重要 |
| 数値不安定性の可能性があるため、Current inflow (電流の流入)とCurrent outflow (電流の流出)のどちらか一方のみを設定することはできません。少なくとも1つの基準電位を定義することで、過剰な制約が解決され、それぞれの境界で期待される流入または流出が得られます。 |
関連分野
電気的な解は、領域のすべての導電性物質におけるElectric Potential (電位)を分解することによって計算されます。Current Density (電流密度)とJoule Heat Generation (ジュール発熱)の場は、電位解から導出されます。
- Electric Potential (電位): 電位場は、導電材料の材料抵抗率を含めて解かれ、領域を通過する電流の電位差を示します。モデルが所定の電流が流れる電気回路の一部分しかカバーしていない場合、結果として生じる電位差はその系の電位降下となります。
- Current Density (電流密度): 電位の勾配が導電体中の電流の流れを引き起こします。Current Density (電流密度)は、導電体中の電流の局所分布を3次元ベクトル場として提供し、\(A/m^2\)の単位で提供されます。ポストプロセッサで Statistics 機能 (統計ポスト処理ツール)を使用して、導体の断面を通過する総電流を計算するできます。
- Joule Heat Generation (ジュール発熱): ジュール熱による熱エネルギー損失は局所電流密度と材料の抵抗率の組み合わせはによって定義され、\(W/m^3\)の単位で提供されます。オームの法則にはの電流は2乗が入ることに注意してください。したがって、散逸電力は電流に比例して指数関数的に増加します。Statistics 機能を使用すると、導体部品内部の総電力損失を計算することができます。
\[P=RI^2\]
ここで、
\(P=\) 電力損失、\(R=\) 電気抵抗、\(I=\) 電流。
制限事項
以下の通り、制限事項にご留意ください:
- 流体は常に誘電体とみなされ、電気的問題の解決に寄与しません。
- 現在、電気的計算結果の表示は現在、Result controlプロットの下に含まれていません。
- 電気抵抗率はを温度依存で設定することはできません。電気抵抗率は熱環境によって大きく変化するため、初期シミュレーションの結果、予想外に高温または低温になった場合は、値を調整する必要があります。
- 電気接触抵抗は、熱抵抗のように追加することはできません。3次元でモデル化するか、計算上無視する必要があります。
- 電気境界条件は定常的にしか適用できず、時間依存の入力として提供することはできません。