概要
熱的快適性の国際規格は、「空間内の居住者の大多数が許容できる温熱環境条件をもたらす室内温熱環境要因の組み合わせを規定する」ことを目的として制定されています。
主要な規格には以下のものがあります:
これらの国際規格は、主に座ることを想定している空間(オフィス、劇場、講義室など)の熱的快適性指標を定義するために設計されていますが、そのような空間以外にも適用できます。しかし、これらの規格の背景には、睡眠、医療/看護、または高度の身体活動(スポーツなど)における空間のデータは含まれていないことにご留意ください。また、子供を対象とした要件も考慮されていません。
上記の基準によれば、対象の空間内に居る人のPMV (予想平均申告)は、気温 \(\theta\)、熱放射 \(R\)、湿度 \(\varphi_{R}\)、気流 \(v\)のほか、エネルギー代謝率 \(Met\)や着衣の断熱力 \(clo\)などの個人の要因を合わせた6つのパラメータに基づいて予測することができます。
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PMV計算式 (ISO-7730) |
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\begin{split}PMV=(0.303e^{-0.036M}+0.028)[(q_M-q_W)-3.05\cdot10^{-3} \{ 5733-6.99(q_M-q_W)-p_a \} \\-0.42\{(q_M-q_W)-58.15\}-1.7\cdot10^{-5}q_M(5867-p_a)-0.0014q_M(34-\theta_a)\\-3.96\cdot10^{-8}f_{cl}\{(\theta_{cl}+273)^4-(\overline{\theta_r}+273)^4\}-f_{cl}h_c(\theta_{cl}-\theta_a)]\end{split} ここで: \begin{split}\theta_{cl}=35.7-0.028(q_M-q_W)-0.155I_{cl}[3.96\cdot10^{-8}f_{cl} \\ \{(\theta_{cl}+273)^4-(\overline{\theta_r}+273)^4\}+f_{cl}h_c(\theta_{cl}-\theta_{a})]\end{split} \[ h_c=\begin{cases} 2.38(\theta_{cl}-\theta_a)^{0.25}&(2.38(\theta_{cl}-\theta_a)^{0.25}>12.1\sqrt{v_{ar}}のとき)\\12.1\sqrt{v_{ar}}&(2.38(\theta_{cl}-\theta_a)^{0.25}<12.1\sqrt{v_{ar}}のとき)\end{cases} \] \[ f_{cl}=\begin{cases} 1.00+0.2I_{cl}&(I_{cl}<0.5cloのとき)\\1.05+0.1I_{cl}&(I_{cl}>0.5cloのとき)\end{cases} \]
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シミュレーションは、構想の初期段階で快適性を予測するのに役立ちます。SimScaleは、P.O. Fangerが開発した熱的快適性の静的モデルに従って、PMV (予想平均申告)およびPPD(予測不満足者率)の形で熱的快適性のパラメータを出力します。
Thermal Comfort Parameters (熱的快適性パラメータ)の設定
SimScaleで熱的快適性パラメータスタディを作成するには、まずConvective Heat Transferanalysisを作成します。Thermal Comfort Parameters (熱的快適性パラメータ)フィールドは、Result controlの下のField calculationsの一部として有効にすることができます。
これらのField calculationsは、シミュレーション実行を開始する前に設定する必要があり、実行後に遡って追加することはできません。
設定パネルでは、Field calculationsに必要な追加入力パラメータを指定する必要があります。気温 \(\theta\)、熱放射 \(R\)、気流 \(v\)はすでにシミュレーションの境界条件によって間接的に定義されていますが、エネルギー代謝率 \(Met\)や着衣の断熱力 \(clo\)、相対湿度 \(\varphi_{R}\)は追加入力が必要です。
入力パラメータ
- Clothing Coefficient (clo):
- 定義: 衣服の断熱性を表すのに使用される単位。
- \(1clo=0.155\frac{m^{2} \mathrm{^\circ C}}{W}(0.88\frac{ft^2 \mathrm{^\circ F}}{Btu/h})\)
- 適合範囲:
- ASHRAE-55:[0, 1.5]\(clo\)
- ISO 7730:[0, 2]\(clo\)
- 推奨:夏服には0.5 \(clo\)、冬服には1 \(clo\)。
- Metabolic rate (met):
- 定義: 生物体内の代謝活動により、化学エネルギーが熱と機械的仕事に変換される割合。
- \(1Met=58.2\frac{W}{m^2} (18.4\frac{Btu/h}{ft^2})\)
- 適合範囲:
- ASHRAE-55: [1, 2] \(Met\)
- ISO 7730: [0.8, 4] \(Met\)
- 推奨: 座っている人(例: 劇場の観客)には1\(Met\)を、活動的に座っている人(例: オフィスワーク)には1.5\(Met\)を使用。
- Relative Humidity (%):
- 定義: 同じ温度、同じ全圧における水蒸気の飽和圧力(または密度)に対する空気中の水蒸気の分圧(または密度)の比。
- ASHRAE-55:
- 適合範囲:[0 - 1910] \(Pa\)
- ISO7730:
- 適合範囲:[0 - 2700] \(Pa\)
- ASHRAE-55:
- 定義: 同じ温度、同じ全圧における水蒸気の飽和圧力(または密度)に対する空気中の水蒸気の分圧(または密度)の比。
計算に用いる値
- 気流速度
- 適合範囲:
- ASHRAE-55: [0, 0.2] \((m/s)\)
- ISO 7730: [0, 1] \((m/s)\)
- 現在のThermal Comfort Parameters (熱的快適性パラメータ)計算では、適合範囲に従って風速の範囲を自動で調整することはできません。
- 適合範囲:
- 空気温度
- 適合範囲:
- ASHRAE-55:N/A
- ISO 7730:[283.15, 303.15]\(K\)
- 適合範囲:
- 平均放射温度 (MRT)
- 適合範囲
- ASHRAE-55:N/A
- ISO7730:[283.15, 313.15] \(K\)
- 現在の実装では、すべての領域の表面温度の面積加重平均に基づいて、領域全体で均一なスカラー値としてMRTを近似しています。この近似は外観による要素を考慮せず、放射率を1と仮定しています。
- 適合範囲
出力パラメータ
Thermal Comfort Parameters (熱的快適性パラメータ)は、ISO 7730およびASHRAE-55標準論文に詳述されているコードに基づいて計算されています。上昇気流速度が0.2 \(m/s\)以上では、Thermal Comfort Parameters (熱的快適性パラメータ)の補正は行いません。
- PMV (予想平均申告)
- 定義: 人間の熱的快適性の感覚に経験的に適合するように定義された次元指標。
- 有効範囲: -3(寒い) - +3(暑い)
- 快適さを感じる範囲:
- ASHRAE-55:
- 推奨限界値: [-0.5, 0.5]
- ISO7730:
- 過酷限界値:[-2, +2]
- 新築建物推奨限界値: [-0.5, +0.5]
- 既存建物推奨限界値: [-0.7, +0.7]
- ASHRAE-55:
- PPD(予測不満足者率)
- 定義: 環境に対して不満を持つ集団の割合を予測するために定義された相対的な指標。
- 有効範囲:5% - 100%
- 快適さを感じる範囲:
- ASHRAE-55推奨範囲:[0%, 20%]
注釈
- SimScaleは、入力パラメータが規格に準拠した範囲を超える場合、これを自動で防止する機能はありません。計算された出力は、規格で定義範囲内の値に対してのみ保証されます。
- シミュレーション設定の一部として放射効果を考慮する場合、このモデルで使用される平均放射温度(MRT)の推定は、実際に観測されるよりも全体的な温度を高くみなす可能性があります。MRTはPMV/PPDに寄与するパラメータとして、放射が有効な場合と無効な場合のシミュレーションで等しく計算されます。放射が有効な場合、表面温度に由来する放射による寄与がわずかに追加される可能性があります。
関連チュートリアル
参考文献
- 最新 建築環境工学 改訂4版
- ANSI/ASHRAE Standard 55: Thermal environmental conditions for human occupancy
- ISO 7730:2005Ergonomics of the thermal environment — Analytical determination and interpretation of thermal comfort using calculation of the PMV and PPD indices and local thermal comfort criteria
- Wikipedia: Poul O. Fanger
- Wikipedia: Metabolic equivalent
- Comparison of comfort acceptability ranges, ISO 7730–2005 and EN 15251–2007