流体シミュレーションを実行した後によく生じる疑問は、「この結果は信頼できますか?」というものです。シミュレーション結果の信頼性を高めるために、実務者はいくつかの優れた手法を活用することができます。メッシュの感度解析は、このプロセスにおける最も重要なツールの1つです。
背景
流体シミュレーションを実行するためには、計算領域を複数の離散メッシュセルに分割することが必要です。シミュレーションでは、支配方程式やその他の数値モデルを適用し、メッシュに基づいて結果を計算しますが、この過程ではメッシュ分割に起因する空間の離散化誤差が生じます。
メッシュ感度解析を実施することで、ユーザーは空間離散化誤差とメッシュが解に与える影響についてより深く理解することができます。最適なシナリオでは、メッシュセルの大きさがゼロに近づくにつれて、空間離散化誤差もゼロになる傾向があります。
実用的な観点からは、これは、ユーザーがシミュレーション結果はこれ以上メッシュに依存しないと判断できた場合、それ以上にメッシュの細分化を追加しても結果はほとんど変化しないことを意味します。
メッシュ感度解析
メッシュ感度解析(Mesh sensitivity study、メッシュの収束性調査などとも呼ばれます)は、異なるメッシュセルの数、細かさで同じシミュレーションを実行し、収束した解が各メッシュでどの程度変化するかを解析するものです。シミュレーションの収束性を評価する方法については、 こちらの記事 を参照してください。
流体シミュレーションで考慮するフィジックスや複雑さは千差万別であるため、さまざまなシナリオに対応できる汎用的なワークフローが必要です。そこで、Roache \(^{[1]}\) )が提唱した Grid Convergence Index(GCI)が一つの選択肢となります。関心のある読者は、 NASAが公開しているExamining Spatial (Grid) Convergence のページで、GCI の詳細な説明と定式化をご覧いただけます。
Roacheは、 Standard メッシャー ツールのような非構造格子と、 Hex-dominant および Hex-dominant parametric (英語) ツールのような構造格子のワークフローを提案しています。以下のセクションでは、一般的なワークフローを説明します。
| 重要 |
| メッシュ感度解析のためには、比較するメッシュ間には十分な解像度の差がある必要があります。 Richardson (\(^{[3]}\) )によるオリジナルの研究では、セルの大きさの倍率は2が提案されています。これは、3次元の問題では、セルサイズが各方向に半分ないし倍になるため、比較するのメッシュ間でセル数が8倍増加することを意味します。 エンジニアリング用途では、セル数が非常に速く増加する可能性があるため、倍率2を使用することは困難な場合があります。これはメッシュの感度解析のコストが大きくなる原因となります。この点を考慮し、最低でも1.26の倍率を推奨します。この設定では、3次元メッシュのセル数は比較ケース間で2倍になります。 |
Standardメッシャー
GCIアプローチを使用する場合、比較するメッシュは、解析領域を均等に微細化/粗くすることをお勧めします。 Standard メッシャーで作成されたメッシュのような非構造メッシュの場合、必ずしもメッシュの細かさは均等にはなりません。
この点を考慮して、Roacheは隣接する3Dな非構造メッシュ間の成長率を計算する代替手法を提案しました:
$$r_{effective} = \big( \frac{N_1}{N_2} \big)^{1/3} \tag {1} $$
ここで、\(r_{effective}\) は線形成長率、\(N1\) はより細かいメッシュのセル数、\(N2\) はより粗いメッシュのセル数です。
以下は、Standardメッシャーで作成した3つのメッシュで、各メッシュ間の\(r_{effective}\) は1.26です:
上記のメッシュセットを感度解析の出発点として使用できます。
Hex-dominant parametric
Hex-dominant parametric メッシャーのような構造メッシュの場合、解析領域全体を通して均等なリファインメントを設定するのが簡単です。このメッシャーではメッシュセルの大きさを、ベースメッシュから開始し、成長率を適用して Bounding box resolution を指定することで調整します。
例として、以下のメッシュは、 Bounding box resolutionは xに15セル、yに146セル、zに45セルです:
この初期メッシュにはおよそ49,000個のセルがあります。 Bounding box resolution を 1.26 倍し、値を切り上げることで、メッシュはドメイン全体で均等に細分化されます:
メッシュ生成は反復プロセスなので、セル数は正確に2倍にはなりません。ユーザーは必要に応じてBounding box resolution をさらに調整することができます。最後に、Bounding box resolutionを再度 1.26 倍することで、さらに細かなメッシュを得ることができます:
この3つのメッシュセットで感度解析を実行することができます。
| 重要 |
| 3つのメッシュの初期セットで感度解析を実行した後、満足のいくメッシュへの独立性が観察されない場合、ユーザーは漸近収束の領域に到達するために領域を絞り込み続けることができます。 その意味で、ベースメッシュを注意深く作ることは役立ちます。高い勾配が予想される領域により多くのセルを追加することで、比較するメッシュの離散化誤差をより早く減らすことができます。 |
期待される結果
中程度のメッシュと細かいメッシュの間で解析結果にわずかな差しかないとき、メッシュセルの数に対する解の収束が確認できたと言えます。GCI の定式化\(^1\) に従うと、セルサイズがゼロに近づくにつれて値は一定値に漸近します。
例えば、3つのメッシュで管内流れのシミュレーションを実行し、 Result control で目的のパラメータ(例えば圧力差) をモニターすると、次のようにプロットできます:
各メッシュでセル数が2倍になっているにもかかわらず、圧力差はセル数100と200でほとんど変化していません。メッシュサイズによって解がどの程度異なるかを理解することは、シミュレーションを実施する際に適切なリファインメントを適用する上で重要です。
| ご存知でしたか? |
|
リンク先の NASAの記事に記載されている完全な定式化を使用することで、ユーザーは感度解析から次のような貴重な情報を得ることができます。
|
参考文献
- P.J.Roache. "Perspective A Method for Uniform Reporting of Grid Refinement Studies". J. Fluids Eng. Sep 1994, 116(3): 405-413 (9pages).
- NASA. Examining Spatial (Grid) Convergence.
- Richardson Lewis Fry and Gaunt J. Authur 1927. VIII. The deferred approach to the limit. Philosophical Transactions of the Royal Society of London.