この記事では、 Conjugate Heat Transfer v2.0 (共役熱伝達 v2.0) 解析でOrthotropic (異方性)熱伝導率を設定する方法と、単位ベクトルの設定について説明します。
プリント基板(PCB)の背景
正確なシミュレーション結果を得るためには、現実的な材料特性を割り当てることが重要です。Isotropic (等方的)な材料特性とは、方向に依存しない特性を意味し、Orthotropic (異方的)な材料は方向に依存する特性を持ちます。
一般的なプリント基板(PCB)は、プラスチック(通常はFR4)の層と銅の層で構成されています。この部品は単一の材料から構成されるわけではありませんが、便宜上シミュレーションでは単一材料として扱うことが多いです。
PCBは熱伝導率に異方性があるのが特徴で、これを考慮して計算することが重要です。通常、面内の熱伝導率は非常に高く(約20\(W/(m.K)\) )、面間の熱伝導率は1\(W/(m.K)\) 以下であることがよくあります。PCBの異方性熱伝導率の値の計算方法に興味がある方は、 こちらの論文 をご覧ください。
ソリューション
SimScaleのConductivity type (伝導率タイプ)の設定は、シミュレーションツリーのMaterial内の固体材料にあります。3つのオプションがあります:
- Isotropic (等方性)
- Orthotropic (異方性)
- Cross-plane orthotropic (面における異方性)
Orthotropic (異方性)および Cross-plane orthotropic (面における異方性)設定方法は以下の通りです。
Orthotropic (異方性)
Orthotropic (異方性)設定では、各方向に対して異なるThermal conductivity (熱伝導率)を定義することができます。
さらに、 Orientation (方向)は Cartesian (直交座標系)または Custom (カスタム)を選択できます。 Cartesian (直交座標系)では、グローバル座標系を使用して x, y, z 方向を決定します。
Custom (カスタム)の場合、ユーザはローカルのUnit vector x (単位ベクトル x) とUnit vector y (単位ベクトル y)を定義することでローカル座標系を設定します。ローカルの単位ベクトルの定義は、グローバル座標系を基準として行われることに注意してください。
例えば、以下の図2は、以下の入力に基づくローカル座標系を示しています:
- Unit vector x (単位ベクトル x) : (0, 0, 1)
- Unit vector y (単位ベクトル y) : (1, 0, 0)
- Unit vector z (単位ベクトル z) : アルゴリズムによって自動的に制御され、上記二つのベクトルに直行します。
この方式によって、ユーザーはローカル座標系を柔軟に設定することができます。例えば、図3のように、斜めの相対座標系を定義することも可能です:
Cross-plane orthotropic (面における異方性)
Cross-plane orthotropic (面における異方性)構成の場合、ユーザはIn-plane (面内)方向とCross-plane (厚み)方向の熱伝導率を定義する必要があります。Orthotropic (異方性)アプローチと同様に、Cartesian (直交座標系)と Custom (カスタム)を選択できます。
Cartesian (直交座標系)を使用する場合、Cross-plane (厚み)方向は常にグローバルなz方向とみなされ、In-plane (面内)方向はグローバルなxおよびy方向に作用します。
Custom (カスタム)の場合、ユーザーはCross-plane (厚み)方向熱伝導率が作用する方向を定義する必要があります。最後に、In-plane (面内)方向はCross-plane (厚み)方向に直交する平面に作用します。
図4は、面直交方向の構成例を示しています。ビューアでは、入力に基づくCross-plane (厚み)方向が矢印で示されます。
熱伝導率のOrthotropic (異方性)モデルにより、PCB材料のシミュレーションをより正確に行うことができます。
期待される結果
結果の違いを示すために、単純な電子デバイスモデルをIsotropic (等方性)とCross-plane orthotropic (面における異方性)のPCB材料でテストします。Isotropic (等方性)シミュレーションでは、 熱伝導率 20\(W/(m.K)\) を定義します。
等方性PCBは横断面方向の熱伝導率が高いため、PCBの底面も高温になります。同じシミュレーションをCross-plane orthotropic (面における異方性)でも解きますが、 In-plane (面内)方向伝導率を 20\(W/(m.K)\) と定義し、z 方向のCross-plane (厚み)方向伝導率を 0.5\(W/(m.K)\) と定義すると、次のような結果が得られます:
Cross-plane (厚み)方向の熱伝導率が低いため、PCB 全体でより大きな温度勾配が発生します。その結果、Cross-plane (厚み)方向の熱伝導率が低下するため、プロセッサの温度がわずかに高くなります。