Passive Scalar とは
Passive scalar (パッシブスカラー) とは、流れに乗って輸送される物理量(スカラー量)を計算する機能です。ここで、スカラー量とは例えば空気中の物質の濃度を表し、計算内では単位は指定されていません。割合や%、ppmあるいは、g や kg など任意の単位を想定してユーザーが値を入力する必要があります。また、シミュレーション内で流れおよび熱的な挙動にパッシブスカラーは影響をもたらしません。利用するシチュエーションとしては、排気ガスや煙といった物質の広がり、換気による空気の入れ替わりなどの計算を行いたい場合に有用です。
Passive scalar を使用する場合、シミュレーションツリーの複数の項目で設定が必要です。なお、 Incompressible 解析タイプにおいては、 Result control の Scalar transport の設定でパッシブスカラーの単純な場合の可視化を行えます。
Incompressible, Convective heat transfer, Conjugate heat transfer で利用できます。
グローバル設定における設定
Passive scalar を有効にするために、グローバル設定の Passive species で計算したいスカラー値の数を指定します。例えば、流れに乗った煙のみを考える場合は1種類ですので、1 とします。2以上で設定した場合、パッシブスカラーの種類は番号で管理しますので、ユーザー自身でどの番号がどの物質かメモ等で記録してください。
図1: グローバル設定の設定パネルにおける、パッシブスカラーに関連した項目
Modelにおける設定
シミュレーションツリーの Model の設定パネルで、以下の項目を設定します。
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(Sct) Turb. Schmidt number (乱流シュミット数)
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解析領域全体について、乱流シュミット数を設定します。乱流シュミット数は、運動量の乱流輸送と質量の乱流輸送の比を表します。ここで、乱流シュミット数は流体の特性ではなく、流れの特性である点に注意してください。一般的な値の範囲は、0.5 ~ 1.3 です。解析を行おうとしている流れの特性が未知な場合は、デフォルト値である0.7の使用を推奨します。
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Diffusion coefficient (拡散係数)
- Fickの第一法則における拡散係数を設定します。これは、パッシブスカラーの拡散のしやすさを表す数値です。
Boundary condition における設定
シミュレーションツリーの Boundary condition で流入境界を設定する際、流入する流体のパッシブスカラーの値を設定できます。
Passive scalars の Value で1sあたりに流入するスカラー値を設定します。なお、グローバル設定で設定したパッシブスカラーの種類の数だけ入力する行が表示されます。上から順番に、1番のパッシブスカラーから並んでいます。
図2: Inlet 境界条件における Passive scalar の設定
Initial condition における設定
シミュレーションツリーの Initial condition に グローバル設定で設定した数のパッシブスカラーの項目が表示されます。初期条件として、各 Passive scalar の値を設定したい場合は設定できます。 Subdomain を設定して、特定の領域に対して設定を行うこともできます。
Passive scalar sources における設定
シミュレーションツリーの Advanced concepts 左の+をクリックして展開すると、 Passive scalar sources という項目があります。クリックすると表示される設定パネルで、パッシブスカラーが発生を設定できます。
設定パネルの項目
- Passive scalar sources: Passive scalar source の設定方法を切り替えます。詳細は後述の Passive scalar source のタイプ をご覧ください。
- Passive scalar variables: パッシブスカラーの種類を設定します。
- (φ) Flux: 1 秒あたりの数値を設定します。単位は決まっていませんので、割合や%、ppmあるいは、g や kg など任意の単位を想定して値を指定します。
- Entity / Geometry primitives: パッシブスカラーの発生領域です。ビューアあるいはシーンツリーでボディを指定するか、ジオメトリプリミティブを作成して、パッシブスカラーの発生源とする領域を指定してください。
Passive scalar source のタイプ
Passive scalar source
これは単位時間あたりの値で指定します。言い換えれば、1/sで与えられるPassive scalarの変化率です。
発生領域として geometry primitive の point を複数使用する場合、各点は次のような値を持つことになります。
ここで、
- Φ = 指定した (φ) Flux [1/s]
- Vi = 個々の点のセルの体積 [m^3]
- V = 全ての点のセルの体積の合計 [m^3] (単一の点ではVと同じ)
Volumetric passive scalar source
単位体積あたりの値で指定します。したがって、実際の流入量は発生領域として指定したジオメトリの体積を用いて計算されます。
発生領域として geometry primitive の point を複数使用する場合、各点は次のような値を持つことになります。
ここで、
- Φ = 指定した (φ) Flux [1/m^3 s]
- Vi = 個々の点のセルの体積 [m^3]
使用例
駐車場における排気ガスの例を考えます。この例では、一酸化炭素をパッシブスカラーとして想定します。 Passive scalar source で発生源として車の位置を指定します。
図4: Passive scalar source の設定例
ポストプロセッサで Iso volume (等値体積) フィルタで、一酸化炭素の広がりを可視化した結果を示します。これをもとに、危険度や換気対策などを考えることができます。
図5: パッシブスカラーを用いて解析した結果の可視化例