概要
このチュートリアルでは、ゴルフボール周りの流れについて、Compressibleソルバーによる圧縮性空力シミュレーションを実行します。
図 1:ゴルフボールの周囲を流れる流線と圧力分布の可視化
このチュートリアルでは、次のことを学びます。
- 圧縮性シミュレーションのセットアップと実行
- Saved selectionsの設定
- 境界条件、材料、その他のプロパティの割り当て
- Standardアルゴリズムによるメッシュ作成
次の手順で解析を進めます。
- シミュレーションのためのCADモデルを準備します。
- シミュレーションの条件を設定します。
- メッシュを作成します。
- シミュレーションを実行し、結果を評価します。
| 注意 |
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このチュートリアルは、Professionalプランをお持ちのユーザーのみがアクセス可能な圧縮性解析タイプでシミュレーションを行います。Communityプランの方は解析条件の設定や実施はできません。 アップグレードのご相談は問合せからお願いいたします。。 |
1. CADモデルの準備と解析の種類の選択
1.1. CADモデルをインポートする
まず、下のリンクをクリックしてください。ジオメトリを含むチュートリアル・プロジェクトがあなたのWorkbenchにコピーされます。

図2:SimScale WorkbenchにインポートされたゴルフボールのCADモデル
1.2. CAD Mode
はじめに、流体領域のジオメトリを作成します。これが、実際に解析の計算領域となります。CADモードに入るには、図に示すようにEdit a copyボタンをクリックします。

図3:このボタンをクリックすると、CADモードに接続されます。
画面上部のツールバーからCreate の Flow volumeを選択します。

図4:利用可能な機能はすべてページの上部に配置されています。
Externalを選択します。流体領域の抽出には、解析の種類に応じて2つの利用可能なオプションがあります。外部空力ではExternalを使用します。これは、モデル周囲の流体領域のジオメトリを作成するために使用されます。
図5:External Flow Volumeを選択
次に、領域の寸法は下図のようにします。L はゴルフボールの直径です。
図6:モデルの基準長さによる領域の大きさ
具体的な値は図の通りに入力します。モデルが対称であることを利用し、計算リソースを節約するために、領域は半分に分割されています。
- Xmin: -0.22, Xmax:0.66, Ymin: -0.22, Ymax: 0.22, Zmin: 0, Zmax: 0.22
- Seed faceをクリックし、ドメイン内にあるボールの面を選択します

図7:計算領域内の寸法とSeed face
完了後、Applyをクリックします。次に、BodyセクションのDelete機能を選択し、ボールのソリッドパーツを削除します。

図8: ボールもモデルから削除し、流体領域のみを残します。
右側のシーンツリーからGolf ballを選択し、Applyをクリックします。

図9:CADモードのジオメトリツリーを使用したソリッドボールの削除
操作が終了し、ボールが削除されたら、右上のSaveボタンをクリックすると、編集内容を保存してジオメトリがワークベンチで使用できるようになります。

図10: 流体領域のみが存在し、ゴルフボールがあったスペースが空になった状態でワークベンチに戻る。
ワークベンチがロードされると、いま作成した新たなジオメトリが表示されます。必要に応じて、元のジオメトリをを削除することができますCADモデルを削除することで、異なるバージョン間の混乱を避けることができます。
図11:CADジオメトリの削除方法
次に、新しいバージョンの名前をGolf ballに変更します。
図12:新バージョンの名前を変更するには、古い名前をクリックして編集します。
1.3. Saved selectionsの作成
ゴルフボール表面のSaved selectionsを作成します。
- 3Dビューアから流体領域の壁面をそれぞれ選択し、右クリックし、ドロップダウンメニューからHide selectionを選択して非表示にします。
図13: 計算領域の壁面を隠す
- ページの上部にあるボックスの選択範囲を有効にします。
- すべての面が選択されるまで、モデル全体をドラッグします。
- Saved selectionsの隣にある+をクリックします。
- 新しいセットにBallという名前を付けて、Create new setボタンをクリックします。
図14:ゴルフボールのすべての面を含むSaved selectionsを追加する。
1.4. 解析種類の選択
Saved selectionsの作成が終わったら、Create simulationをクリックして、シミュレーションを開始します。

図15:新規シミュレーションの作成
Compressibleを選択します。これは、領域のどの点においてもマッハ数が 0.3 よりも大きい場合に使用されます。このゴルフボールのシミュレー ションでは流速が速いため、圧縮性解析が最も適しています。
図 16:圧縮性流体解析の選択
表示されるパネルでTurbulence modelをk-omega SSTに切り替えます。
図 17: k-omega SST 乱流モデルを選択します。
2. 材料と境界条件の設定
2.1. 材料の設定
今回のシミュレーションでは、固体の周りの気流を解析します。そのため、流体領域に材料物性を割り当てる必要があります。左パネルのシミュレーションツリーのMaterialsの横にある+アイコンをクリックし、材料ポップアップでAirを選択し、最後にApplyを押します。
図 18:圧縮性流体解析のための材料リスト
領域を示すモデルはチュートリアルの最初に CAD モードで作成した流れ領域のみのため、材料が自動的に割り当てられています。
図 19:流体領域に割り当てる空気の物性
パネルの上部にあるチェックボタンを押して、選択を確定します。また、パラメータを変更し、適切な名前を付けることでカスタムな物性値を保存できます。
2.2. 境界条件の設定
モデル上に境界条件を設定するには、Boundary conditionsの横にある+アイコンをクリックし、このセクションで説明する種類を選択します。
図20:境界条件の追加
このシミュレーションで使用される境界条件の概要は下図の通りです。流れは+X方向とするので、-X面を流速流入境界、+X面を圧力流出境界とします。ボール断面の対称面は対称境界、その他の流体領域周囲の面はスリップ境界、ボール表面はノースリップ境界とします。
図 21:ゴルフボールの境界条件の概要
2.2.1. Velocity Inlet
- Velocity Inletは Uxを59 m/sに設定します。この値は、平均的な男性ゴルフプレーヤーが達成するボールスピードに近いものです[1]。
- Assigned Facesは下図の手前側にある、ボールに近い面を選択します。
図 22:ゴルフボール周辺の気流の流入速度
2.2.2. Pressure Outlet
下図の手前側の面はPressure outletの条件として 101,325 Paを設定します。
図 23: 圧力排出口の境界条件
2.2.3. Slip Walls
ドメインの上面、下面、および右面にSlip wallの境界条件を追加します。
図24:Slip wallの境界条件
2.2.4. Symmetry
対称面に Symmetry 条件を割り当てます。この境界条件について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
図25: 対称性の境界条件を適用する
2.2.5. Rotating Walls
| Tips |
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ゴルフボールは下図のように回転するので、回転軸は負のz方向とします。 図26: ゴルフボールの回転 出典:(http://en.wikipedia.org/wiki/Magnus_effect [2]) |
平均的な男性ゴルフプレイヤーのスピン率に従って条件を定義することにします。新しくWallの境界条件を作成します。
- (U) VelocityにRotating wallを選択します。
- Turbulence wallをFull resolutionに設定する。
- 負のz方向に回転軸を設定するための、Rotation axisのzを-1とします。
- (ω) Rotational velocityに平均的な男性ゴルフプレイヤーのスピン率(回転速度)は343 rad/s[1]を、
- ゴルフボール表面に割り当てるために、Assigned facesには、Saved selectionsのBallを選択します。
図27: ゴルフボールのSaved selectionsに境界条件を割り当てる。
2.3. Simulation Control と Numerics
Simulation Controlのパラメータを以下のように設定します。
図28: Simulation controlの設定画面
Numericsで、Relaxation typeがAutomaticに設定されていることを確認します。
Relaxation typeは、収束速度とシミュレーションの安定性に直接関係します。このチュートリアルでは、Automatic relaxationが効果的です。
図29: Numericsの設定パネル
3. Mesh
シミュレーションツリーのMeshをクリックし、メッシュの設定パネルを開きます。
Standardアルゴリズムを選択し、デフォルトの設定を維持します。
図30: メッシュ設定画面
3.1. Meshing Refinements
このプロジェクトでは、ゴルフボールの周りの領域でいくつかのメッシュの細分化(refinement)が必要です。Standardアルゴリズムの使い方や、メッシュの細分化についてもっと知りたい場合は、こちらをクリックしてください。
3.1.1. Create Geometry Primitives
リファインメントを追加する前に、2つのGeometry primitivesを作成します。
- 画面右のシーンツリーで、Geometry primitiveの下にある+アイコンをクリックします。
- Sphereを選択します。
図31 Geometry primitiveの作成
エンティティにSphere 1と名前を付け、半径を0.1(m)に定義します。
図32 球体の作成
続いて、半径の小さい(0.05 m)、2つ目の球体プリミティブ (Sphere 2) を作成します。
図33: 2つ目の球体ジオメトリプリミティブの寸法
3.1.2. 球体にRefinementを割り当てる
メッシュのリファインメントを追加するために、MeshのRefinementsの隣にある+アイコンをクリックします。
図34 : Region refinementの追加
Sphere 1にregion refinementを追加します。
図35: 大きな球体領域に対するRegion refinement
Sphere 2には、より細かいRegion refinementを設定し、より密度の高いメッシュを作成します。
図36: 小さな球体領域のRegion refinement
| Tips |
| メッシュの設定が終わった後、Generateボタンをクリックしないでください。この時点でメッシュを生成しなくても、後でシミュレーション実行を開始した後に、自動的にメッシュが生成されます。 |
| 計算実施済みのプロジェクト |
| 解析条件の設定とシミュレーション計算がすでに実施済みのプロジェクトをこちらからご確認いただけます。 |
4. 解析の開始
すべての設定が完了したら、Simulation Runsの横にある+アイコンをクリックして、計算を開始します。最初にメッシュが生成され、その後、プラットフォームが実行されます。
図 37: 新規シミュレーション実行
計算の実行中、ポストプロセッサーで中間結果を見ることができます。
| Tips |
| 計算結果はリアルタイムで更新されます。つまり、ソルバーが最終的な解を計算している間でも中間結果を見ることができるのです。 |
5. ポスト処理
5.1. 収束プロット
シミュレーションが完了すると、シミュレーションの収束を確認することができます。完了したRunの下からアクセスできます。
図 38: ResidualsのプロットはConvergence plotsで確認できます。
収束プロットは、解が信頼できるかどうか、または設定に何らかの変更を加える必要があるかどうかを示します。例えば、メッシュをより細かくしたり、シミュレーション時間を長くしたりします。次の図は、シミュレーションの残差が収束していく様子をプロットで表示しています。
図39: 流体変数の残差の収束プロット
5.2. サーフェスプロット
ゴルフボールシミュレーションの結果を表示するには、終了したRunの下にあるSolution Fieldsタブをクリックします。これにより、オンラインのポストプロセッサに接続されます。
図40: 今度は完了した実行結果の下にあるSolution Fieldsをクリックし、ポスト処理にアクセスします。
いくつかのポスト処理フィルターを使用して、結果をさらに分析してみましょう。ゴルフボールの圧力分布は以下の手順で確認できます。
- パーツカラーに移動し、ColoringのドロップダウンメニューからPressureを選択します。ポストプロセッサに入る際、デフォルトではこのパラメータでモデル全体が着色される場合があります。
- ポストプロセッサーが最終タイムステップ(2000 sec)の結果を表示していることを確認します。
- 流体領域の壁面をクリックし、ワークベンチ上で右クリックし、Hide selectionを選択します。
なお、既にCutting Planeのフィルターがある場合、ゴミ箱のアイコンで削除できます。
図 41: ボール上の圧力分布を見やすくするために、領域の壁面を隠します。
画面下部のカラースケールを右クリックし、Use continuous scaleを選択すると、色のグラデーションが滑らかに表示されます。
図42: Use continuous scaleを利用すると、表面上の値分布がより滑らかに表示されます。
対称面も含めると、結果はこのように表示されます。
図 43: 連続尺度を使用した対称面とゴルフボール上の圧力分布
ボールの前方には圧力の高い領域が、後方には圧力の低い領域が観測されることが分かります。ボールの後方では速度が減速しているため、流れが分離し、このような低圧領域が形成されます。
5.3. 流線
最後に、流線を可視化するために、Particle traceを選択します。
図 44: フィルターパネルからParticle Traceを選択し、新しいセットを追加する
- Pick Positionの隣にある丸いアイコンをクリックします。
- 流入面の、対称面とy軸の中心にできるだけ近いところにシードポイントを適用します。
- #Seeds horizontallyは、z軸に沿った流線の数を表します。2に設定します。#Seeds vertically は、y軸に沿った流線数を表します。領域のy方向全体をカバーするのに十分な大きさとして100を入力します。
- ColoringとしてVelocity Magnitudeを選択します。
- この場合、流れは入口から正のx方向に向かってのみ流れるので、Trace both directionsを無効にします。
図45: 開始位置を対称面の近くに設定し、速度値で色付けします。
この設定で、最終的に流線はこのように表示されます。
図 46: 流線が速度値で着色した結果
図46では、流れの挙動を観察できます。下流側では流速の減少が顕著で、低圧となることがわかります。領域の端に行くにしたがって、流線は徐々に平行に戻り周囲と同じ状態になります。
5.4. アニメーション
ツールバーからAnimationを選択してアニメーション表示できます。
図47: ツールバーのAnimationを選択
再生ボタンをクリックするとアニメーションが開始されます。下図は、流線のアニメーションの例で、速度の大きさで色分けされています。
図48: アニメーションの種類をParticle traceにして、流線をアニメーション化します。
Recordでアニメーションを動画として保存できます。動画のサンプルは記事の添付ファイルをご確認ください。
ポストプロセッサの詳しい使い方は、ポスト処理ガイドをご覧ください。
おめでとうございます。チュートリアルは終了です。
References