解析タイプ: Thermomechanical
概要
このチュートリアルででは、最大圧力・最大温度のときのエンジンピストンの熱応力解析を、ひとつひとつ手順を追いながら実施していきます。
図1: 熱応力解析で得た熱応力の可視化結果
このチュートリアルでは、下記の操作について学習します。
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熱応力解析について条件設定を行い実行する
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Saved selectionsでサーフェスをグループ化する
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境界条件・材料設定・その他の設定を行う
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SimScaleのStandardアルゴリズムでメッシュを作成する
以下の流れで行っていきます。
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CADモデルを用意する
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解析条件を設定する
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メッシュを作成する
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解析を実施し、結果を分析する
1. CADモデルの準備と解析タイプの選択
まずはじめに、下記URLをクリックしてチュートリアル用プロジェクトをインポートし、解析で使う部CADデータを読み込みます。
図2: チュートリアルプロジェクト
1.1. シミュレーションを作成する
解析条件設定の最初のステップとして新たにシミュレーションを作成します。
図3: ジオメトリのダイアログとCreate Simulation
Create Simulation をクリックすると、解析タイプの選択画面が表示されます。
図4: 解析タイプの選択画面
Thermomechanical を選択し、 Create Simulation をクリックします。すると、解析条件を設定しきていくためのシミュレーションツリーが表示されます。
図5: シミュレーションツリー
1.2. Saved selectionsの作成
解析条件の設定を行う前に、指定した面をグループ化した Saved selections を作成します。解析条件の設定途中でも作成できますが、境界条件などを設定するまとまりが分かっているのであれば、予めセットにしてしまうと条件設定が楽になります。このチュートリアルでは、下図に示すように、Top, Ring 1~3, Groove ring 1~3がセット化されています。
図6: 本チュートリアルで作成されているSaved selections
まだ、ピストンの内側とピストンスカートのSaved selectionsは作成されていません。以下の手順で作成していきましょう。
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画面右のシーンツリーで、既に作成されているSaved selectionsを名前の横の目のアイコンをクリックして非表示にします。
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まだSaved selectionsに含まれていない部分を全てセット化するので、ビューア上で右クリックし、Select all で全てを選択します。
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画面右のパネルで Saved selectionsの横にある+ボタンをクリックし、新たなSaved selectionsを作成します。名前は何でもよいですが、このチュートリアルでは Interior and skirt と呼びます。
図7: Saved selectionsの作成
2. 解析条件の設定
シミュレーションツリーの各項目の設定を行っていきます。
2.1. Model
シミュレーションツリーを上から見ていくと、まず Model という項目があります。ここでは、重力加速度の大きさと向きを設定します。
Maginitude は9.81 m^2/sとし、eyを-1とします。
図8: Model の設定パネル
2.2. Materials (材料)
続いて、ピストンの材料としてアルミニウムを設定します。Materials の横の+ボタンをクリックすると、材料ライブラリが表示されます。
リストから Aluminium を選択し、 Apply で決定します。このチュートリアルで使用するCADモデルはひとつの部品で構成されているため、自動的にその部品に材料物性値が割り当てられます。
図9: 材料ライブラリ
2.3. Boundary conditions (境界条件)
熱応力解析では、熱に関する境界条件と、力と変位に関する境界条件の2種類を設定します。
2.3.1. 熱的境界条件
このシミュレーションでは、Convective heat flux (対流熱流束) を設定します。Boundary conditions の横の+ボタンをクリックし、Conective heat flux を選択します。
図10: Convective heat flux をシミュレーションツリーで選択します
この設定では選択した面にて、参照温度と熱伝達係数を設定し、対流による熱伝達を計算します。まずは、ピストンの上面の設定を行ってみましょう。
設定パネルで以下の様に設定を行います。
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(T0) Reference temperature は 741℃
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Heat transfer coefficient は 450 W/(K . m^2)
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Assigned Faces は 画面右の Saved selections のリストから top を選択します
- この設定では、上面のみですので、ビューア上で該当する面をクリックしても同じです。
図11: ピストン上面のConective heat flux の設定
その他の面についても設定を行います。各 Saved selections に対して、以下の表に基づいて値を設定してください。いま設定したものを含めると、最終的に8個の条件を作成します。
表1: 各Saved selectionsの Convective heat flux 境界条件の設定
| Saved selections | Reference temperature [°C] |
Heat transfer coefficient [W/(K*m^2)] |
|---|---|---|
| Ring 1 | 180 | 150 |
| Groove – Ring 1 | 180 | 1000 |
| Ring 2 | 160 | 150 |
| Groove – Ring 2 | 160 | 400 |
| Ring 3 | 140 | 150 |
| Groove – Ring 3 | 140 | 400 |
| Interior and skirt | 120 | 650 |
2.3.2. 力学的境界条件
荷重や変位に関する境界条件を設定していきます。合計では、圧力境界の設定を3つ、リモート変位の設定を2つ定義します。
それでは、Boundary conditions から、Pressure を選択してまずは以下のようにピストン上面の圧力を設定します。 (P) Pressure は 2e7 Pa (20 MPa)とします。
図12: ピストン上面の圧力境界条件の設定
同様にして、Ring 1 と Ring 2 に対しても Pressure を設定します。圧力の値はそれぞれ以下の通りとしてください。
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Ring 1: 1.4e8 Pa
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Ring 2: 4e6 Pa
続いて、リモート変位を設定します。ピストンがピンで支持されている状態を表現するために、ピストンの面に対してピンの軸を外部点としてリモート変位を設定します。以下のように、青く選択された面に対してExternal pointを設定してください。Displacement とRotation はゼロのままとします。
- x: 0 m
- y: -0.042 m
- z: 2.028e-2 m
図13: Remote displacement の設定
同様にして反対側についても Remote displacement を設定します。以下のようにしてください。
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x: 0 m
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y: -0.042 m
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z -0.01992 m
図14:2 2つめの Remote displacement の設定
これで、境界条件の設定をすべて終えました。続いては、メッシュ作成です。
3. メッシュ作成
Standard アルゴリズムでメッシュを作成します。シミュレーションツリーで Mesh をクリックし、めメッシュ作成の設定パネルを開きます。 Algorithm は Standard とし、以下のように設定します。 SimScaleでは基本的には標準の Standard の使用を推奨します。
- Sizing: Manual
- Maximum edge length: 1.8e-3 m
- Minimum edge length: 0 m
図15: Mesh の設定パネル
作成されたメッシュは下図のようになります。
図16: メッシュ分割された様子
メッシュはデフォルトで二次要素となります。なお、要素に関する設定はシミュレーションツリーの Element technology で行われています。
| 計算実施済みのプロジェクト |
| 解析条件の設定とシミュレーション計算がすでに実施済みのプロジェクトをこちらからご確認いただけます。 |
シミュレーション計算の実行
計算条件の設定が一通り終わりましたので、シミュレーション計算を実行します。Simulation runs の横にある+ボタンをクリックします。
図17: Simulation Runs
New run のダイアログが表示されますので、必要であれば名前を変更します。 Start をクリックすると計算が開始されます。実行中の計算は、ワークベンチの左下に表示されます。
このページの末尾には計算実施済みのプロジェクトへのリンクがあります。ポスト処理のチュートリアルを進めていただくこともできます。
5. ポスト処理
計算が終了したら、終了した Run の Solution Fields か Post-process results をクリックするとポストプロセッサで解析結果を確認できます。
図19: ポストプロセッサの開き方
どのように結果を可視化するかの設定を Filter (フィルタ)と呼びます。コンター図で表示する値は以下の手順で変更できます。
- Filter パネルの Parts Color を開く
- Coloring でカラーコンター表示する内容を選択する
図20: Von Mises 応力をカラーコンター表示する場合の設定
5.1. 温度分布の可視化
温度分布を可視化してみます。図20の手順で、 Coloring に Temperature を選択します。さらに、以下の手順で表示の設定を変更してみましょう。
- ビューアの下で、温度の単位を ℃ に変更する
- カラーバーを右クリックし、 Use continuous scale に変更する(これで、コンター図の色の変化が滑らかなグラデーションになります)
図21: ピストン表面の温度分布を可視化した結果
図22: カラーバーを右クリックしたときのメニュー。色の設定を変更できます。
5.2. 応力分布の可視化
同様にして、今度は Von Mises 応力の分布を可視化します。 Coloring を Von Mises Stress にします。以下のように単位と色の設定を変更します。
- 単位を MPa にします
- 色の表示の仕方を Use continuous scale にします
- カラーバーの上限を400にします
図23: Von Mises 応力の可視化結果
このようにカラーバーの上限を設定すると、閾値を設定できます。すなわち、赤い部分に着目することで設定した閾値よりも大きな応力が生じている場所を探すことができるのです。この場合では、ピンを通す穴の上部で熱膨張による変形が阻害され、熱応力が生じることで大きな応力が生じています。
5.3. 変形の可視化
最後に、ピストンの変形の様子を可視化します。ツールバーから Displacement を使用します。これにより、解析結果を変位をスケール表示した変形図で表示できます。
図24: ツールバーの Displacement フィルタ
初期設定値では、変形の様子が良く分かりませんので、スケーリングを変更します。 Scaling factor を20に変更してみてください。
図25: Scaling factor の変更
合わせて、カラーコンターも変位に変更します。 Parts Color の Coloring を Displacement → Magnitude とします。
図27: Parts Color を変位量に変更する手順
最終的に、以下のような変形図表示が得られます。
図27: ピストンヘッドの熱による変形を表した変形図
これにより、設定した条件下でピストンヘッドがどのように熱変形したかがよく分かります。上面がくぼみ、リングの部分が膨張しています。また、スカートと呼ばれる底部の膨張も確認できます。ピストンスカートの設計では、熱変形がポイントのひとつとなり得ます。
お疲れ様でした!これでチュートリアルは終了です。