概要
非ニュートンモデルは、CFDシミュレーションにおける非ニュートン流体の挙動をモデル化するために使用されます。このページでは、SimScaleプラットフォームで利用できる最も一般的な非ニュートンモデルについて詳しく説明します。
非ニュートン流体
非ニュートン流体では、流体中の局所せん断応力と局所せん断速度は非線形関係にあり、比例定数を定義することはできません。したがって、粘度は固定スカラーではなく、変数です。さらに、粘度がせん断速度やせん断速度の時間履歴に依存することも重要です。
例としては、ケチャップ、カスタード、歯磨き粉、デンプン懸濁液、塗料、血液、シャンプーなどの液体が挙げられます。これらの液体の中には、振るとサラサラになるものもあれば、粘度が高くなるものもあります。
ワークベンチ
現在、非ニュートン流体は Incompressible (非圧縮性)、Multiphase (混相流)、 Convective Heat Transfer (対流熱伝達) 解析タイプで Compressible がオフの場合に使用できます。 Materials でライブラリから材料を選択し、粘性モデルをドロップダウンから選択するだけです。
図1は、非ニュートン流体の一般的な種類とその応力-ひずみ挙動を示しています。
非ニュートン流体には主に以下の 3 つのタイプがあります:
擬塑性流体 (またはシアシニング流体)
疑塑性またはシアシニング(せん断減粘)挙動は、せん断速度の増加に伴う流体の粘度の低下として説明されます。シアシニングを起こす一般的な物質には、ケチャップ、マニキュア、シリコンオイル、ホイップクリームなどがあります。
ダイラタント流体 (またはシアシックニング流体)
ダイラタントまたはシアシックニング(せん断増粘)挙動は、シアシニングとは逆の挙動を示し、せん断速度の増加に伴って流体の粘度が増加します。シアシックニングを起こす一般的な物質には、コーンスターチ溶液があげられます。
ビンガム流体 (または塑性流体)
この種の挙動には、流体が流動または変形するために超えなけれ ばならない「降伏応力」と呼ばれる最小応力の閾値があります。粘塑性流体材料は、外部応力が降伏応力値より小さい場合、(剛体のように)弾性的に変形します。外部応力が降伏応力より大きい場合、応力とひずみ速度の関係は線形または非線形になります。\(^2\)
| 注意 |
| 線形挙動を示す粘塑性流体は、粘度(比例係数)が一定で降伏応力が一定のビンガム流体と呼ばれます。 |
非ニュートンモデル
非ニュートン流体のせん断応力とせん断速度の関係を表す数理モデルには、次のようなものがあります:
| 重要 |
| すべてのモデルは動粘度\(\nu\) を使用していることに注意してください。 |
1. Power law (べき乗則)モデル
Power law (べき乗則)モデルは一般化されたモデルの一種です。このモデルは粘度\(\nu\) とひずみ速度\(\dot{\gamma}\) の基本的な関係を与えます。このモデルでは、粘度の値は下限値\(\nu_{min}\) と上限値\(\nu_{max}\) で境界を定めることができます。
この関係は次のように与えられます:
$$\nu=k\cdot\dot{\gamma}^{n-1} \tag{1}$$
ここで、SI単位で:
- \(k\): コンシステンシー指数 \([m^2/s]\)
- \(\dot{\gamma}\): せん断ひずみ速度 \([s^{-1}]\)
- \(n\): べき乗指数
べき乗則指数に基づいて、\(n\) :
- \(0 < n < 1\)の場合: 流体はシアシニング挙動を示します。\(n\) の値が小さいほど、シアシニングの程度が大きくなります。
- \(n=1\)の場合: 流体はニュートン挙動を示します。
- \(n>1\)の場合: 流体はシアシックニング挙動を示します。\(n\) の値が大きいほど、シアシックニングの程度が大きくなります。
| ご存知でしたか? |
| べき乗則は非ニュートン流体の挙動を近似する最も単純かつ最も広く使用されているモデルです。使用上の注意は、せん断速度の限られた範囲でのみ有効であることです。したがって、\(K\) と\(n\) の値は、考慮されるせん断速度の範囲に依存します\(^2\) 。 |
2. Bird-Carreauモデル
これは、せん断速度の全範囲にわたって有効な4パラメータモデルです。せん断速度が非常に高い場合や低い場合など、べき乗モデルから大きく逸脱する場合には、せん断速度がゼロのときの粘度(\(\nu_{0}\) )およびせん断速度が無限のときの粘度(\(\nu_{∞}\) )を定式化に組み込むことが不可欠になります。\(^2\)
このモデルでは、粘度\(\nu\) とせん断速度\(\dot{\gamma}\) が次の式によって関連付けられます:
$$\nu =\nu_{\infty}+(\nu_{0}-\nu_{\infty})\times [1+(k\cdot \dot{\gamma})^{a}]^{(n-1)/a} \tag{2}$$
ここで、
- \(a\): 線形挙動からべき乗則への変化に対応する定数
- \(\nu_{0}\): せん断速度がゼロのときの粘度
- \(\nu_{\infty}\): せん断速度が無限大のときの粘度
- \(k\): 緩和時間(秒)
- \(n\): べき乗指数
式2から、低いせん断速度ではカロー流体はニュートン流体として振る舞い、高いせん断速度ではべき乗則流体として振る舞うことがわかります。
| 注意 |
| Bird-Carreauモデルは主に食品、飲料、また血流のアプリケーションに使用されます。 |
3. Cross-Power lawモデル
Cross-Power lawモデルもまた、せん断速度の全範囲に有効な4つのパラメーターモデルです。
モデルの定式化は以下の通りです:
$$\nu =\nu_{\infty}+\frac{(\nu_{0}-\nu_{\infty})}{1+(m\cdot \dot{\gamma})^{n}} \tag{3}$$
ここで、SI単位で:
- \(\nu_{0}\): せん断速度がゼロでの粘度
- \(\nu_{\infty}\): せん断速度無限大における粘度
- \(\dot{\gamma}\): せん断ひずみ速度\([s^{-1}]\)
- \(n\): べき乗指数
- \(m\): 線形挙動がべき乗則に変化する自然時間(秒)
このモデルは、\(m\) がゼロに近づくにつれてニュートン流体の挙動に近づきます。
4. Herschel-Bulkleyモデル
Herschel-Bulkleyモデルも非ニュートン流体の一般化された非線形モデルです。このモデルはビンガム流体とべき乗則流体の挙動を一つの関係式にまとめたものです。ひずみ速度が非常に小さい場合、材料は粘度\(\nu_{0}\) を持つ非常に粘性の高い流体として振る舞います。降伏応力\(\tau_{0}\) 以降のひずみ速度では、粘性はべき乗則の関係で表されます。
モデルの定式化は次のように与えられます:
$$\nu = min(\nu_{0}, \tau_{0}/\dot{\gamma} + k\cdot \dot{\gamma}^{n-1}) \tag{4}$$
with$$\tau=\tau_0+k\cdot \dot{\gamma}^{n}$$
ここで、SI 単位で:
- \(\tau\): せん断応力\([m^2/s^2]\)
- \(\tau_{0}\): 降伏応力\([m^2/s^2]\)
- \(k\): コンシステンシー指数\([m^2/s]\)
- \(n\): べき乗指数
- \(\nu_{0}\): せん断速度がゼロのときの粘度
さらに、\(\tau < \tau_{0}\) の場合、Herschel-Bulkleyモデルは流体ではなく、非変形性固体として振る舞います。ここでもべき乗則指数\(n\)に基づいて:
- \(0<n<1\)の場合: 流体はシアシニング挙動を示します。
- \(n=1\) かつ\(\tau_{0}=0\)の場合: 流体はニュートン挙動を示します。
- \(n>1\)の場合: 流体はシアシックニング挙動を示します。
関連プロジェクト
参考文献
- https://cfd.direct/openfoam/user-guide/transport-rheology
- Continuum Mechanics-Progress in Fundamentals and Engineering Applications, Dr. Yong Gan.