Rotating zonesとは
Rotating zones機能は、解析領域内に存在するタービンやファンのような回転する系をモデル化できます。これにより、回転体が流れに及ぼす影響を計算に加味できます。
図1: Rotating zonesを用いて解析したフランシス・タービン内の流れ
Rotating zonesを使用できる解析タイプ
Rotating zones は以下の解析タイプで使用できます。
- Incompressible
- Compressible
- Convective heat transfer
- Conjugate heat transfer
- Multiphase (グローバル設定でLocal time steppingを無効にしている場合のみ)
- Multi-purpose
Rotating zone は、回転領域となるジオメトリを指定して作成します。回転領域のジオメトリがまだない場合は、この記事の該当するセクションでジオメトリの用意方法を確認してください。SimScaleのCADモードを利用して回転領域を作成する場合、解析条件の設定を始める前に行ってください。
解析上の設定
シミュレーションツリーのAdvanced conceptsから設定できます。Advanced conceptsの横の+ボタンをクリックすると、Rotating zonesがありますので、さらに+ボタンをクリックします。AMI (Arbitrary Mesh Interface) rotating zone と MRF (Multiple Reference Frame) rotating zone の設定を作成できます。
図2: シミュレーションツリーのRotating zoneの設定
MRF (Multiple Reference Frame, マルチリファレンスフレーム)
ある時間区切りでの非定常な回転運動を定常現象として近似する手法です。したがって、メッシュやジオメトリが実際に動く訳ではありません。また、この設定を利用する回転領域にて、大きく非定常な現象が含まれないように注意してください。
MRF では、設定した回転領域において、解くべき支配方程式に少し変更がなされます。具体的には、回転運動による力を考慮するように追加の項を計算するようにします。これにより、回転による流れへの影響をシミュレーションします。非定常で回転運動を計算するよりも計算コストを大きく削減できるうえに、設定を正しく行えば良い計算精度が得られる手法です。
MRF rotating zoneの設定
図3に、MRF rotating zoneの設定パネルを示します。
図3: MRF rotating zone の設定パネル
設定項目はそれぞれ以下の通りです。
-
Origin
- 以下の方法で回転の中心座標を設定します。
- ビューアで点をクリック (青矢印のボタン)
- 選択したジオメトリの中心 (赤矢印のボタン) 先に、Assigned Volumeを設定する必要があります。
- 座標を入力、
- 以下の方法で回転の中心座標を設定します。
-
Axis
- 回転軸の方向を設定します。回転方向は、右手の法則に従います。
-
(ω) Rotational velocity
- 単位を [rad/s] か [°/s] で指定します。テーブル形式での指定とパラメトリックスタディ機能の利用も可能です。
-
Assigned Volumes
- 回転領域を設定するボリュームを選択します。設定するボリュームとして使用するジオメトリについてはこちらをご覧ください。
AMI (Arbitrary Mesh Interface、スライディングメッシュ)
非定常計算の場合 (グローバル設定でTime dependencyをTransientとした場合) のみ利用できます。AMIでは、回転領域と静止領域の間にメッシュの境界を作成し、各時間ステップにおいて回転領域を実際に動かします。境界面においては回転部品の現実的な回転運動を模擬するために値が内挿されます。
実際にメッシュを回転させ、非定常な解析を行う手法ですので、MRFと比較すると計算コストを多く要します。また、計算のタイムステップの大きさにも影響を受けますので注意してください。回転領域において現象の非定常性が強くない限り、非定常解析でもMRF rotating zoneの利用が推奨されます。(Multi-purposeでは、非定常解析ではスライディングメッシュのみ利用できます。)
AMI rotating zoneの設定
図4に、AMI rotating zoneの設定パネルを示します。
図4: AMI rotating zoneの設定パネル
設定項目はそれぞれ以下の通りです。
-
Motion type
- Oscillating rotating motion (振動回転運動) か Rotating motion (完全な回転運動)を選択します。Oscilatingとした場合は、Amplitude (振幅) も設定が必要となります。
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Rotation
- Angular rotation か Vector rotation を選択します。
-
Point on axis
- 以下の方法で回転の中心座標を設定します。
- ビューアで点をクリック (青矢印のボタン)
- 選択したジオメトリの中心 (赤矢印のボタン) 先に、Assigned Volumeを設定する必要があります。
- 座標を入力、
- 以下の方法で回転の中心座標を設定します。
-
Rotation axis (Rotation を Angular rotation とした場合のみ)
- 回転軸の方向を設定します。回転方向は、右手の法則に従います。
-
(ω) Rotational velocity
-
-
Rotation を Angular rotation とした場合
- 設定した方向の軸周りの回転速度を、 [rad/s] か [°/s] で指定します。テーブル形式での指定とパラメトリックスタディ機能の利用も可能です。
-
Rotation を Vector rotation とした場合
- x, y, zの各軸周りの角速度を指定します。
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Rotation を Angular rotation とした場合
-
-
Assigned Volumes
- 回転領域を設定するボリュームを選択します。設定するボリュームとして使用するジオメトリについてはこちらをご覧ください。
※補足:右手の法則
右手の法則の概要を下図に示します。右手の親指を軸の方向として、その他の指の向きを回転方向とします。
図5: 回転方向と軸方向の右手の法則
メッシュの設定
Rotating zoneを使用する場合、対象の領域をCell zoneとして指定する必要があります。メッシュアルゴリズムによって、Cell zoneを設定する方法が異なります。解析タイプMulti-purposeを利用する場合は特別設定は必要ありません。
Standard メッシャーの場合
Physics-based meshingをオンにすると、Advanced conceptsを設定した領域は自動的にセルゾーンに指定されます。
図6: Standardメッシャーの場合の設定
Physics-based meshingをオフにした場合は、手動でセルゾーンを設定する必要があります。シミュレーションツリーでMeshの中に、Cell zonesがありますので、+ボタンをクリックしてAssigned Volumesに設定します。
図7: Physics-based meshingをオフにした場合、Cell zoneを設定します
Hex-Dominant Meshes
Hex-Dominantメッシャーを使用する場合は、Cell zoneをSurface refinementで設定します。Cell zoneという項目があるので、With cell zoneとして、回転領域のボリュームをAssigned Faces or Volumesに設定します。
図8: Hex-Dominantメッシャを使用する場合のCell zoneの設定 (Surface refinement)
回転領域を設定するジオメトリの準備
Rotating zonesを使用する場合、解析領域とする流体領域のボリュームの他に、Rotating zoneのAssigned Volumeとして設定するボリュームが必要になります。準備方法を以下に示します。
CADモードで作成する
SimScaleのCADモードで円筒形状ボリュームを作成し、回転領域の設定に利用できます。以下に、簡単に手順を示します。
CADモードのツールバーから、Cylinderをクリックします。
図9: CADモードのCreateセクションのCylinder
円筒ボリュームの作成では、Methodを変更することで、2通りの設定方法を利用できます。
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Custom
- Center (中心座標)、 Axis (軸の方向)、 Heights (高さ)、 Radius (半径)を指定して、手動で円筒の位置、向き、形状を定義します。
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From faces
- ジオメトリ上の面を選択し、選択した面を囲むような円筒を作成します。
- Clearance factorでは、作成する円筒と選択する面のクリアランスを設定します。回転領域として使用する場合は、1.1 が推奨されます。
以下に、ドローンのプロペラを例に、それぞれの画面表示を示します。
図 10: CustomでCylinderを作成する場合
図11: From facesでCylinderを作成する場合。矢印の選択ツールを使用すると、一括で選択もできます。
3D CADソフトで用意する
予め、ご使用されている3D CADソフトで回転領域を表すパーツをアセンブリ内に作成しておくことも可能です。SimScaleのCADモードでは単純な円筒形状しか作成できないので、ファン等の形状に沿うような回転領域形状にしたい場合は、この方法を使用する必要があります。
ここでは、ポンプのチュートリアルで使用するジオメトリを例に説明します。CADは、OnShapeを使用しています。
ポンプのローターブレードのCADを示します。回転領域は、可能であれば単純な円筒ではなく、少しRがついた形状、あるいは円錐部分があるような形状の方がパーツ形状にフィットしそうなことが分かります。
図12: ローターブレードのCADデータ
中央側面に、形状に沿うようにスケッチを作成し、回転押し出しで回転領域を作成していきます。
図13: 回転領域のためのスケッチ
図14: 回転押し出しで作成された回転領域のボリューム
この例におけるより詳細な手順はこちらの記事 でご確認いただけます。
関連するチュートリアル
Rotating zoneを使用するチュートリアルを紹介します。