概要
このチュートリアルでは、翼形状で周波数応答解析(調和解析)を行う方法を、解析条件設定からポスト処理まで順番に示します。なお、「翼の固有値解析」のチュートリアルの続きです。本チュートリアルを進めるにあたって必須ではありませんが、振動解析の理解を深めるためにも、お時間のある方は是非そちらのチュートリアルも行ってみてください。
本チュートリアルで学べること:
- 周波数応答解析をセットアップし、実行する
- 境界条件・材料物性・その他の解析条件の設定
- SimScale標準アルゴリズムでのメッシュ作成
SimScaleでの標準的なワークフローで進めます。
- CADモデルの準備
- 解析条件の設定
- メッシュの作成
- 解析を実施し、結果の可視化
アニメーション1: 25Hzで励起された翼形状の変位。変位は10倍に増幅表示されます。
1. CADモデルの準備と解析タイプの選択
固有値解析のチュートリアルを終えている場合は、そこで使用したワークベンチを引き続き使ってください。ジオメトリとメッシュは同じものを使います。
そうでない場合は、下記のリンクよりチュートリアルのプロジェクトをインポートし、コピーして利用してください。
図1: インポートした翼のジオメトリ
1.1. シミュレーションの作成
最初に、今回使用するジオメトリ Bladeをクリックします。
図2: SimScaleワークベンチで新しくシミュレーションを作成する手順。
Create Simulationボタンをクリックすると、次の選択画面が表示されます。
Harmonic(周波数応答解析)を選択し、Create Simulationをクリックします。
図3: SimScaleで利用できる解析タイプの一覧。
2. 解析条件の設定
今回の解析で設定する条件の概要を示します。端面の固定に加えて、固有値解析で得た固有周波数での圧力を付与します。さらに、材料にはアルミニウムを設定します。
図4: このチュートリアルで実施する周波数応答解析における境界条件の概要。
2.1. Material(材料)の設定
左側のパネルにて、Materialsの横の'+'ボタンをクリックします。すると、登録されている材料のリストが表示されます。
Aluminiumを選択し、Applyで決定します。
図5: あらかじめ登録されている材料リスト
これで材料を作成できました。Assignmentにはbladeが自動的に割り当てられますので、チェックマークをクリックして設定を適用します。
2.2. Boundary conditions(境界条件)の設定
次に、図4のように境界条件を設定していきます。設定できる境界条件の種類について詳しくはこちらのドキュメントを参照してください。
2.2.1. Fixed Support(固定支持)の設定
まず、固定端にFixed supportを設定します。この設定を用いると、設定面の全方向への変位がゼロとなります。次のように操作してください。
Boundary condionsの横にある'+'ボタンをクリックすると、境界条件の種類を選択するメニューが表示されます。Fixed supportを選択し、翼の片側の側面を選択して割り当てます。
図6: Fixed support境界条件を設定する手順
2.2.2. Pressure(圧力)の設定
同様に、図4に従って圧力付与面の境界条件を設定します。この圧力により、周波数応答が励起されます。Pressureを選択します。翼の下面に 500 Paの圧力を設定します。Phase angle (位相角)は 0° のままとします。
図8: Pressure境界条件の設定。翼の下面に割り当てます。
このように外力が複数付与される場合、位相角は0°としないことも多いです。例えば、クルマのエンジンの解析では、異なる周期で動くピストンから力を受けますので、外力のひとつは位相を0°とし、他の外力の位相角は実際のピストンの位相差から相対的に決めていきます。
| 周波数応答解析では荷重の境界条件が必須 |
|
周波数応答解析では、最低でも1つは荷重に関する境界条件を設定する必要があります。そうでないと、荷重による励起がされなくなり、解析を行えません。 ここで言う荷重に関する境界条件とは、centrifugal force, force, nodal load, pressure, remote force, surface load, volume loadが該当します。 |
2.3. NumericsとSimulation Controlの設定
Simulation controlにて、荷重で励起する周波数を指定できます。有意な結果を得るには、事前に固有値解析を行い、固有振動数に目途をつけておくことが重要です。
そのため、固有値解析のチュートリアルの結果がここでは重要になります。固有値解析の結果から、最初の10個の固有モードと固有振動数を抜粋して示します。
図9: 固有値解析のチュートリアルで得られた翼の固有周波数の表
10次までの固有周波数は4~255Hzであることが分かります。ここでは、最初の3つに着目します。Simulation controlにて、次のように設定を変更します。
- Excitation frequenciesをFrequency listとします
- Start frequencyを 2.5 [1/s]とします
- End frequencyを 30 [1/s]とします
- Frequency steppingを 2.5 [1/s]とします。
- この設定では、合計で2.5 Hz~30Hzの範囲で2.5Hz刻み、合計12個の周波数について解析が行われます。
図10: 周波数応答解析でのシミュレーション制御の設定。
なお、解析を行う周波数は、表形式で入力やCSVのアップロードもできます。
2.4. Result Controlの設定
今回は、ジオメトリの指定したポイントでの値を取得するために、Result controlの設定を追加します。次のように設定します。
- Point dataの横の'+'ボタンをクリックします
- Field selectionをDisplacementとします。Component selectionはAll、Complex numberはMagnitude and phaseです。
- 最後に、Geometry primitivesの横の'+'をクリックし、ポイントを指定します。
図11: ポイントデータの結果出力を作成
値を出力するポイントは以下のように設定します。チェックマークボタンをクリックすると、測定点として保存されます。
図12: データポイントの座標設定。結果を出力するポイントをさらに追加して作成することもできます。
3. Mesh(メッシュ分割)
メッシュを作成する際は、AlgorithmをStandardとすることを推奨します。Standardアルゴリズムでは、多くの形状において自動で良い結果が得られます。
設定は初期値のまま、Genarateをクリックしてメッシュを生成してください。得られるメッシュは、精度面で優秀な二次のメッシュとなります。固有値解析のチュートリアルと同じです。)
図13: 周波素応答解析での標準的なメッシュ作成の設定
数分で下図のようなメッシュが作成されます。
図14: 翼のメッシュ分割。固有値解析のチュートリアルで作成したものと同等なメッシュとなります。
| 計算実施済みのプロジェクト |
| 解析条件の設定とシミュレーション計算がすでに実施済みのプロジェクトをこちらからご確認いただけます。 |
4. シミュレーションの開始
これまでの設定を終えると、シミュレーションツリーが以下のようになっています。シミュレーションのセットアップが終わりましたので、Simulation Runsからシミュレーションを開始します。
図15: 解析を実行する準備が整ったシミュレーションツリーの状態。
計算の途中であっても、途中経過の計算結果をポストプロセッサで確認できます。
5. ポスト処理
30分ほどで結果を確認できるようになるはずです。計算が終了すると、メールで通知されます。
5.1. 変位値のプロット
最初に、Result controlで設定したポイントデータについて確認してみましょう。シミュレーションツリーのPoint data 1を展開し、Displacement (magnitude) から、周波数に対する変位応答の大きさを確認できます。変位値のピークが固有値解析で得られた周波数の近辺に生じていることが分かります。
図16: 指定したポイントでの変位のプロット。25Hzで変位が最大となっています。
また、Displacement (phase angle)より位相角のプロットを開くと、このシミュレーションでは0°と180°の位相角のみ観測されています。これにより、変位と荷重のピークが同じタイミングで生じていることが分かります。
| 減衰を考える場合の位相角 |
|
減衰をモデリングする場合、位相がずれて0°と180°の間に他の位相角が現れます。これは、系の外にエネルギーが放散されることにより生じます。SimScaleでは、Materialsで減衰を設定できます。 複数の外力を付与する場合も、0°~180°未満の位相角が現れます。 |
5.2. 結果分布の表示
周波数応答解析の結果を確認するには、終了したSimulation RunsのダイアログからPost-process resultsをクリックします。
図17: シミュレーションが終了したら、ポストプロセッサで結果を確認できます。
Parts ColorのColoringをVon Mises Stress (real)にします。カラーバーを右クリックし、Use continuous scaleをクリックすると、カラーコンターをグラデーション表示に変更できます。
図18: Use continuous scaleでカラーコンターの表示方法を変更できます。
Coloringを変更することで、他のパラメータも可視化できます。
図19: カラーコンターで分布表示できる項目
例えば、Displacement (real) (変位の実部)をカラーコンター表示させ、countinuous scaleを用いると以下の様になります。
図20: Displacement (real)の分布表示の結果。翼の中央付近が最大となった。
5.3. 変形図の表示
Displacement filterを使用すると変形図で変位の可視化や拡大表示ができます。変形図からは、部品の挙動に関しての挙動に関する貴重な洞察を得ることもできます。例えば、図16で変位が最大となっていた25Hzでは、以下の図のように曲げが生じています。
次の手順でこのような可視化を行いました。
- FieldをDisplacement (real)とします。
- 変位を分かりやすくするために、Scaling factorを10にします。
- 画面右側のFrequenciesにてスライダを調整して25Hzに合わせます。なお、このスライダを調整することで別の周波数での結果も確認できます。
図21: 変位の生じ方を視覚的に調べられます。
さらに、変形モードをアニメーション表示させて、動的な挙動も可視化できます。上部のAnimationをクリックしてAnimation filterを作成します。Animation typeをShapeに設定すると、このチュートリアルの始めに掲載したアニメーションが得られます。
図22: 変形モードのアニメーションを表示する手順
SimScaleのポストプロセッサで結果の分析を行いましょう。ポストプロセッサについて詳しくはこちらのページにてご確認いただけます。
おめでとうございます!これでチュートリアルは終了です。