概要
この記事では、過渡熱伝達シミュレーションに関するヒントとコツについて説明します。
固体内の熱伝導解析を行う Heat Transfer の詳細については、ドキュメントページ をご覧ください。また、熱伝導解析のチュートリアルはこちらをご覧ください。
1. CADのクリーニング
解析に用いるCADデータは以下の点を気を付けてください。
- まず、 シート/サーフェス要素は避けてください。CADモデルはソリッドパーツのみで構成してください。
- 次に、 ソリッドが重ならない ようにします。
- 最後に、 CADの欠陥を避けることです。この記事では、CADの欠陥を見つける方法について説明しています。
以下の点は必須ではありませんが、費用対効果の高いシミュレーションを行うために強くお勧めします:
- 必要な部分のみをモデリングします。言い換えれば、余分な、あるいは不必要な機能/コンポーネントを取り除きます。(小さなナット、ボルト、ピンなど)。
- 残った穴や隙間は埋めてください。
2.CADの準備
CAD ModeでCADモデルを Imprint (インプリント)を実施します。これにより、実際に接触している個々の面が作成されます。インプリント機能については、 このページを 参照してください。また、CADデータ準備についてもっと詳しく知りたい場合は、こちらのページをご覧ください。
3.材料物性の割り当て
温度に依存する材料特性を割り当てたい場合は、 グローバル設定にて、Nonlinear analysis (非線形解析) をオンにします。また、過渡解析を行うために、 Time dependency を Transient としてください。
温度依存の材料特性を表で定義します:
テーブル割り当ての詳細については、 こちらの記事をご覧ください。
4.初期条件
コンポーネントの初期温度を定義します。Initial conditions 直下にある (T) Temperature (温度)では、すべてのコンポーネントに初期の温度値を割り当てられます。さらに、 Subdomains (サブドメイン)では、個々のコンポーネントの初期温度を定義することができます。
5.境界条件
使用可能な境界条件についてはこちらをご覧ください。この記事では、過渡伝熱解析で一般的に使用されるBCについて説明します。
5.1 Volume heat flux (体積熱流束)
この境界条件を使用して、部品の発熱を定義します。過渡解析では、発熱の時間依存性を定義できます。
時刻歴での発熱量の変化を、csvファイルとしてアップロードすることも、テーブルに手入力することもできます。 テーブルのヘッダーを更新することを忘れないでください。
上の表の割り当てでは、最初の5秒間は発熱がありません。2番目の5秒から発熱が始まり、20秒まで約30.8 \(MW/m^3\)に達します。シミュレーションの終了まで30.8 \(MW/m^3\)の発熱を継続させたい場合は、tを終了時間、Heatflux valueを30.8 \(MW/m^3\)とした行を追加します。そうでない場合は、表に定義されていない対応する発熱量が外挿によって求められます。指定された割り当ての結果は、以下のグラフをご覧ください。
5.2 Convective heat flux (対流熱流束)
対流熱流束境界条件は、コンポーネントと周辺環境との間の熱交換を定義するために使用できます。例えば、固体と周囲環境の間の熱交換は通常、対流熱伝達と輻射熱伝達で起こります。 Reference temperature (参照温度) と Heat transfer coefficient (熱伝達係数)を設定して、状態を表現します。値の設定には、ハンドブックなどを参考にしてください。
材料物性と同様に、熱伝達率や参照温度を表で定義することもできます。例えば、周囲温度が変化する状況を表現するために、参照温度が時間で変化するように定義することができます。
表で値を設定する方法の使用場面として、他に急な温度上昇のシミュレーションが考えられます。急激急な熱の入力により系の温度が急激に上昇しその後冷却され、ユーザーはこの温度変化のみを測定しているとします。この場合、 Fixed temperature (固定温度) 境界条件では、急激な温度上昇とその後の冷却はうまく計算できません。しかし、対流熱流束境界条件を使用することができます。突然の熱入力の間は非常に高い熱伝達率を割り当て、その後、熱伝達率を下げればよいのです。
5.3 Surface heat flux (表面熱流束)
表面熱流束は、部品表面での発熱を定義するために使用できます。例えば、PCB上に発熱する小さな回路素子があるとします。これらの小さな素子を全てモデリングする必要はありません。CAD上でそれらが配置された領域を面分割して別の領域として作成し、SimScaleで表面熱流束を割り当てるだけです。
熱流束のもう一つの利用法として、温度に依存した熱損失の定義が考えられます。 経験的近似値または計算を使用して、放射および対流熱伝達係数を近似します。
$$U = h_{r} + h_{c} \tag{1}$$
ここで、\(U\) [W/m2・ K ] は全体の熱伝達率、\(h_{c}\) と\(h_{r}\) はそれぞれ対流と輻射の熱伝達率です。
$$q = U \cdot \Delta T \tag{2}$$
ここで、\(q [W/m^2]\)は熱流束、\(\Delta T\) [K]は表面とその周囲の温度差です。
温度依存の熱流束を得るためには、表の定義が重要です。特に表面と外部領域との温度差が大きい場合、放射熱伝達の影響が大きくなります。次の表は水平な平面からの温度依存熱損失を示しています。この例では、周囲領域を 20 ℃の静止空気と仮定しています。表面の放射率は1(黒体)と仮定しています。
6. メッシュ分割
通常、厚さ方向に対して3節点または4節点のメッシュを作成することを推奨します。過渡解析では、メッシュサイズはシミュレーション時間とコストに大きく影響します。
非常に薄いパーツを含む複雑なモデルの場合、 Fineness を非常に粗めにしたうえで、 Refinement (メッシュ細分化) として Inflate boundary layer (レイヤーの細分化) を追加することをお勧めします。これにより、コストパフォーマンスが良い解析を期待できます。
Local element size (ローカル要素サイズ) によるメッシュ細分化を使用するのも常に良いアイデアです。これにより、メッシュサイズを制御し、均一なメッシュを作成できます。
次の図は、2つのメッシュ分割戦略の結果を示しています。 バウンダリーレイヤーと ローカル要素サイズのリファインメントが推奨されるメッシュ作成方法です。
7. 時間ステップ
最初の計算では Numerics の設定はデフォルトのままとすることが推奨されます。 Simulation intervals はシミュレーション時間です。 Time step length を小さくすると、より正確な結果が得られますが、計算に要する時間が長くなります。Write interval では、解析結果を出力する計算ステップの間隔を設定します。(1ステップは、Simulation interval ÷ Time step length)
| ご存知でしたか? |
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過渡伝導問題を解くには、主に2つの方法があります:
SimScaleのデフォルトのソルバー設定は、陽解法と陰解法の時間積分のバランスをとることを目的としています (θ = 0.57)。 陰解法は遅く、より多くのメモリを必要としますが、非常に安定で時間ステップに依存しません。一方、陽解法はメモリが少なくて済みますが、 時間ステップが 大きいと非現実的な結果になることがあります。 結果に不安定さが見られる場合は、タイムステップサイズが大きすぎる可能性があります。 Numerics の thetaの値を "1"に変更すると、陽解法が使用できるようになります。 |
メモリ不足エラーやディスクペース不足エラーでシミュレーションが失敗する場合は,θ値を小さくして(ゼロに近づけて),時間ステップを小さくします.次の式は、陽解法における最大時間ステップ長の理論的な制限を定義しています:
$$\Delta t = \frac{1}{2} \cdot \frac{\Delta x^2 \cdot \rho \cdot c_p}{\kappa} \tag{3}$$
\(\Delta t\) \([s]\) は時間ステップ、\(\Delta x\) \([m]\) は最小セルサイズ(2つの節点間の距離)、\(\rho\) \([kg/m^3]\) は密度、\(c_p\) \([J/kg-K]\) は比熱容量、\(\kappa\) \([W/m-K]\) は対象材料の熱伝導率です。
ヒント
- まず、粗いメッシュでシミュレーションを行います。結果を得たら、メッシュを少し細かくして、シミュレーションを再実行します。最後に、最終的なシミュレーション結果と前回のシミュレーション結果を比較します。結果が一致するまでこれを繰り返します。
- 最初のシミュレーションは、大きな時間ステップで開始します。次に、時間ステップを短くし、シミュレーションを再実行します。同様に、結果を比較し、同じ手順に従います。
最終更新日2023年3月8日