概要
物理的な(または「非線形」)接触は、アセンブリの二つの部品間で現実的な接触相互作用を計算することを可能にします。また、同じ部品の異なる面間の自己接触を計算することも可能です。 Contact (線形接触) とは異なり、これらの面は単に線形な関係を介して接続されるのではなく、実際の接触力が計算されます。
非線形な相互作用を有効にするには、面または面のセットの接触ペアを定義する必要があります。これらの面に対して、シミュレーション中にお互いの距離がテストされ、接触が発生した場合、相互作用力が考慮され、これによってこれらの面が互いに貫通しないようになります。これらの力は接触の場合にのみ発生するため、相互作用は非線形の現象であり、したがって非線形解析にのみ適用されます。
設定項目
全体設定
物理接触解析のアルゴリズムは、2つの独立したステップを実行します。
- 形状の非線形変形の計算 (Nonlinearity resolution, 非線形性の解決):
各時間ステップの開始時に、境界条件に起因する形状の変形が物理的接触条件を考慮せずに計算されます。 - 接触コンプライアンス条件の計算 (Contact nonlinearity resolution, 非線形接触の解決):
接触ペア間の相互貫入を計算し、物理的接触条件が適用されるように形状を更新します。次に、接触圧力が計算され、次の時間ステップのために力が計算されます。
シミュレーションツリーの Physical contacts をクリックして表示される、接触計算全体の設定パネルでは、これらの計算ステップの設定を行います。 Nonlinearity resolution と Contact nonlinearity resolution で選択する計算手法により、設定項目が異なります。
| Contact pressure field (接触圧力フィールド) |
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Result control から、接触圧力の分布を出力するよう設定できます。 Result Control > Solution fields > Contact type > Pressure この設定では、接触ペアのスレーブとした面でのみ値を持ちます。 |
| 熱応力解析での接触面での熱伝達 |
| Thermomechanical analysis (熱応力解析)では、 Physical contact で設定した接触面では熱を伝達しません。熱伝導も考慮するようにしたい場合は、Heat transfer only (熱伝達のみ)を有効にして Bonded contact (ボンド接触) を作成する必要があります。もちろん、この設定では、面が機械的に接触していなくても、熱的には完全に接触しているとみなされます。 |
Physical contact の全体設定での項目を説明いたします。
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Nonlinearity resolution (非線形性の解決):
非線形接触を計算する前に行われる、形状の非線形変形の計算に用いるアルゴリズムを選択します。選択可能なパラメータは以下のとおりです:-
Fixed point:
非線形変形を解くためにニュートン反復に加えて外部反復ループを追加します。このアルゴリズムで設定するパラメータは次のとおりです:-
Geometry update (ジオメトリ更新):
アルゴリズムの動作モードを、 Automatic (自動)、 Manual (手動)、 No update (更新なし) から選択します。 -
Max num iterations (最大反復回数):
Automatic モードで使用可能で、アルゴリズムの最大反復回数です。この基準に達した場合、計算が発散したとみなされます。 -
Iteration criterion (反復基準):
Automatic モードで使用可能で、収束したとみなすアルゴリズムのしきい値です。 -
Number of iterations (反復回数):
Manual モードで使用可能で、実行する反復計算の固定回数です。
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Geometry update (ジオメトリ更新):
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Newton (ニュートン法):
ジオメトリの非線形変形の取り扱いをシミュレーション全体のニュートン反復に含めます。設定するパラメータは次の通りです。-
Iteration criterion (反復基準):
解が収束したとみなされる接触貫入残差のしきい値です。
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Iteration criterion (反復基準):
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Fixed point:
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Friction (摩擦):
クーロン型の接線方向摩擦力をシミュレーションで考慮するかどうかを選択します。 Coulomb (クーロン摩擦) を選択した場合、接触計算の全体設定と同様に、アルゴリズムを Newton と Fixed-point から選択できます。これにより、摩擦力の計算を垂直抗力の解法と異なるアルゴリズムを使用できます。 -
Contact nonlinearity resolution (接触非線形の解決):
接触コンプライアンス変形の計算に使用するアルゴリズムを選択します。使用可能な選択肢は以下のとおりです:- Newton: ジオメトリの更新はシミュレーション全体のニュートン反復に含まれます。
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Fixed point: 外部反復ループが全体のニュートン反復に追加され、ジオメトリについて解きます。 Iteration control より反復回数制御方法を変更できます。
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Max num iterations (最大反復回数):
入力した最大反復回数に達すると、計算が発散したとみなされます。 -
Multiple of slave nodes (スレーブ節点数の倍数):
最大反復回数は、スレーブ面の節点数に入力した値を掛けたものになります。
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Max num iterations (最大反復回数):
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Contact smoothing (接触スムージング):
メッシュ表面の法線をスムージングします。接触面が曲面の場合、特にメッシュが粗い場合に有効です。
接触ペアの設定項目
Physical contacts の横の 「+」をクリックすると、接触ペアを作成できます。接触ペアごとに、以下のパラメータを設定できます。
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Solution method (解法):
各物理接触定義に対して、 Penalty method (ペナルティ法)と Augmented Lagrange method (拡張ラグランジュ法)から解法を選択できます。詳細は本ページの下部をご覧ください。
それぞれ、以下のパラメータを設定します。-
Contact stiffness (接触剛性):
ペナルティ法で接触を解く際の接触ペナルティの「剛性」を設定します。 -
Augmented Lagrange coefficient (拡張ラグランジュ係数):
拡張ラグランジュ法で使用でき、拡張された接触方程式のラグランジュ乗数の値です。
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Contact stiffness (接触剛性):
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Friction coefficient (数値解法上の係数):
摩擦力を計算するために設定する係数の種類(摩擦力の計算アルゴリズム)を選択します。垂直力の解法と同様にペナルティ法と拡張ラグランジュ法を選択できます。
※Physical contacts の全体設定で Friction を Coulomb とした場合のみ表示されます。-
Friction penalty coefficient (摩擦ペナルティ係数):
摩擦力を計算するためのペナルティ係数。 -
Friction augmentation Lagrange coefficient (摩擦拡張ラグランジュ係数):
摩擦力を計算するためのラグランジュ乗数。
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Friction penalty coefficient (摩擦ペナルティ係数):
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Coulomb coefficient (クーロンの摩擦係数):
垂直抗力と接線方向の摩擦力の比。
※Physical contacts の全体設定で Friction を Coulomb とした場合のみ表示されます。 - Fictitious clearance (架空のクリアランス): 接触面間に人工的なクリアランスを導入できます。有効にすると、接触面間の距離がマスタークリアランスと スレーブクリアランスの合計より小さい場合に、接触がアクティブであるとみなされます。クリアランスは座標と時間の変数として入力でき、表形式か数式形式でも設定できます。
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Master assignment / Slave assignment (マスター面とスレーブ面の割り当て):
マスターとスレーブの割り当ての指定は、ソルバーのパフォーマンスに大きな影響を与えます。3つの基本ルールについては以下の記事をご覧ください。
接触計算のアルゴリズム
Penalty method (ペナルティ法)
ペナルティ法では、接触の剛性をモデル化したバネ要素を介して物体間の接触相互作用が処理されます。したがってペナルティ法では、定義された接触剛性によっては接触面はわずかに互いに貫通する(食い込む)可能性があり、その貫通により反力が生じます。
数値計算的には、面同士が貫通した際にその挙動にペナルティを与えることで、それ以上の干渉を防ぐように作用する力を生じさせることから、ペナルティ法と呼ばれています。
Contact stiffness (接触剛性)は食い込み量に対する線形な弾性方程式の係数として定義されます。具体的には、ペナルティ係数と呼ばれ、値が大きいほど硬い、すなわち食い込みにくくなります。
Contact stiffness (接触剛性)には Low (低)、Moderate (中)、High (高)、 Custom (カスタム)の 4つの選択肢があります。接触剛性が大きいほど、貫通は少なくなります。しかし、ペナルティ係数が大きくなると繰り返し計算が収束しにくくなります。現実的な挙動と収束のための最適化のトレードオフを見つける必要があります。
Low (低)、Moderate (中)、High (高) としたとき、ペナルティ係数は接触に関与する材料の中で最も柔らかい(ヤング率が小さい)材料のヤング率に対して、以下の倍率をかけた値となります。
- Low (低): 50倍
- Moderate (中): 200倍
- High (高): 1000倍
Custom (カスタム)としたときは、ユーザーはペナルティ係数に任意の値を選択することができます。
| 注意 |
| シミュレーションが終了したら、シミュレーション結果で接触面を確認してください。著しく貫通・食い込みが生じていた場合は、ペナルティ係数を大きくしてシミュレーションを再実行してください。例えば、 Contact stiffness (接触剛性) を Custom (カスタム) として、Penalty coefficient (ペナルティ係数)を一度に10倍ずつ大きくして、貫通が軽微になるまで繰り返してみてください。 |
接触と係数の設定について、より詳しくは 以下の記事を ご覧ください。
Augmented Lagrange method (拡張ラグランジュ法)
Augmented Lagrange method (拡張ラグランジュ法) による接触解法では、ボディ間の接触相互作用は、接触条件を考慮した拡張ラグランジュ方程式によって処理されます。ペナルティ法とは対照的に、接触方程式が厳密に解かれるため、接触面間の食い込みは発生しません。
| 重要 |
| ラグランジュ法を用いると、一般的にペナルティ法よりも正確な結果が得られますが、数値計算の安定性は劣ります。また、ラグランジュ方程式を追加することで新しい自由度を導入するため計算量が増加し、計算時間が長くなります。 |
Contact monitoring (接触モニタリング)
Physical contact (物理的接触) を含む非線形シミュレーションでは、接触計算をモニタリングするためのグラフプロットが提供されます。このプロットにより接触面の貫通や繰り返し計算の状況を確認し、得られたシミュレーション結果に対する信頼が得られます。
以下のプロットはシミュレーション実行中に利用でき、計算が進むにつれて随時更新されます。
Number of contact iterations (接触計算の反復回数)
このプロットは、各荷重または時間ステップで収束を達成するために実行された fix point 反復の回数を示します。
Contact residuals (接触計算の残差)
このプロットは、 反復計算の基準値に従って収束が達成されたとみなされた、各時間または荷重ステップの最後の fix point 反復計算における残差を示します。
Contact penetration (接触貫通)
このプロットは、物理的接触ペアのすべての食い込み量の合計を示します。各食い込み量は、スレーブ面の節点がマスター面の内部に貫通して入ったときに、スレーブ面とマスター面の間の距離として測定されます。得られる値は長さの単位です。
最終更新日2023年2月23日